第3回医療者も行員も、抗議の職場放棄 クーデターが壊した夢

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バンコク=福山亜希、シンガポール=西村宏治
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きしむ国家 ミャンマー政変半年③ デザイン・岩見梨絵
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 「必要な分だけ買ってください」。ミャンマーの最大都市ヤンゴンの薬局。空きが目立つ棚を背に、店主のヤンナインさん(40)が声を掛けた。だが客は我先にと、風邪薬ビタミン剤を手に取っていく。

 「新型コロナウイルスへの不安で、薬の買いだめが起きている。混雑する薬局で感染が広がりかねず、閉店も考えている」とヤンナインさんは話す。

 ミャンマーでは、新型コロナの感染拡大が収まらない。当局の発表では、連日5千~6千人が新たに感染し、累計の死者数は8千人を超えた。実際の数はもっと多いとみられている。SNSには、火葬場で順番を待つひつぎの映像などがあふれる。

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最大都市ヤンゴン中心部の薬局の前に、薬を買い求める市民が行列をつくっていた。ミャンマーではクーデター後の混乱で、食品や薬品が不足し始めている=7月16日、ノーコーコー撮影

 背景には国軍が2月に起こしたクーデターと、それに抗議して職場を放棄する「不服従運動」の存在がある。この運動は医療従事者を中心に始まり、今も多くが職場に戻っていない。そのうえ、国軍が運動参加者の摘発と拘束を進めたことで、医療体制は壊滅的な状況に陥った。

 コロナに感染しても適切な治療を受けられる可能性は低く、不安に駆られた市民が薬を求めて薬局に行列をつくる。だが、感染抑止のため国境を越える物流が制限されており、品不足は深刻だ。インターネットでは通常の数倍の価格で取引されている。

 薬が買えないならせめて免疫力を高めたいと、卵や肉を買い求める人が増え、食料品店でも品切れが続く。

 昨年来のコロナによる苦境にクーデターが追い打ちをかけ、社会や経済をさらに混乱させている。

ミャンマーで国軍がクーデターを起こし、アウンサンスーチー氏らを拘束してから8月1日で半年になります。ミャンマーではいま、何が起きているのでしょうか。連載の最終回では、クーデターに翻弄される市民たちの苦悩に迫ります。

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連載きしむ国家 ミャンマー政変半年(全3回)

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