伊能忠敬、愚直なまでの探究心 地図にたどる偉業の足跡

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編集委員・中村俊介
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 昔の地図って、こんなに巨大だったのか。しかも色鮮やかで、まるで美術品のよう。神戸市立博物館神戸市中央区)の「伊能忠敬」展に居並ぶ伊能図の群れは、実に壮観だ。そのひとつひとつに、全国測量に命を懸けた男の生き様が凝縮されている。

 日本初の全国実測地図を完成させた伊能忠敬(1745~1818)。井上ひさし長編小説『四千万歩の男』の主人公である。

 あしかけ17年、北は北海道から西は九州まで。忠敬率いる測量隊が列島を股に掛けて踏査した測量作業は10次に及ぶ。その行程は4万キロを軽く超え、忠敬自身が歩いた距離は3万5千キロにもなった。

50歳過ぎて測量

 前人未到の偉業は「大日本沿海輿地(よち)全図」に結実する。幕府への上呈はちょうど200年前の1821年。その出来栄えが幕府の面々を驚かせたのも想像に難くなく、ときの為政者は自らが統治する領域の姿形を初めて知ることになった。

 測量事業は第5次から幕府の直轄となったが、それまでは忠敬の手弁当だったという。彼が全国測量に取り組み始めたのは50歳を過ぎてから。決して若くはない忠敬を駆り立てたのはなんだったのだろう。

 「地球の大きさを知りたい、そんな好奇心ではないでしょうか」。永山未沙希学芸員はいう。

 地球が球体であることはすで…

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