スポーツとTV、蜜月に陰り カタールW杯放送権が暗礁

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論説委員・田玉恵美
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 ついにそのときが来た。そんなふうに感じる水面下の動きが伝わってきた。

 来年カタールで開かれるサッカーワールドカップ(W杯)の国内での放送権購入をめぐってNHKと民放が合同で臨んでいた交渉が頓挫したという。協議は、NHKと民放でつくる「ジャパンコンソーシアム(JC)」と、電通との間で行われていた。W杯の放送権は長らくJCが電通を通して国際サッカー連盟(FIFA)から購入してきたが、複数の放送関係者によると、金額で折り合いがつかなかったという。

 「電通が大幅な減額を提示するなど条件が大きく変われば、JCとして再び交渉のテーブルにつく可能性がゼロではない」(民放キー局幹部)ものの、民放サイドが妥協できる金額と提示額との間には大きな差があり、合意に至るのは容易ではなさそうだ。

 NHKが単独で購入した98年フランス大会の国内放送権料は5億5千万円だったが、来年のカタール大会に向けて今回電通がJCに示した金額は200億円を超えたという。別の民放キー局の幹部らは「国民的な関心事で4年に1度のお祭りだからと無理をしてやってきたが、もう耐えきれない」「我々も経営体力が落ち、スポーツ中継の赤字を他で吸収するのが難しくなっている。この状況では撤退するのが合理的な経営判断だ」と語る。

 W杯では2002年の日韓大会以来続いてきた「全局あげての放送」は終わる可能性が高まっている。ただ、各局との個別の交渉は続いているとみられ、電通から200億円を超える金額を示されて独占放送を持ちかけられたキー局もあるが、その条件では断ったそうだ。

視聴率60%出ても要らない」

 五輪やW杯などの大型スポーツイベントでは、放送権料が「みんなで買うしかない」ほどの巨額になり、放送局の経営に重くのしかかるようになった。そこで各局はJCとして合同で交渉・購入することで重い負担に耐えてきた。五輪では1984年のロサンゼルス大会以来、W杯でも約20年にわたって続いてきた仕組みだ。だがそれでも、近年は広告収入ではまかなえないほどの水準に高騰。民放では「赤字」を前提とした放送が続いていた。

 W杯の日本戦は過去に高い視聴率が出たことで知られるが、だからといって放送権の購入費を回収できるほど広告料金がつりあがるわけでもない。「たとえ視聴率が60%出るとしても、もう要らない」とはっきり言う民放幹部もいるほどだ。

 さらにW杯の場合、日本代表が予選リーグで敗退してしまえば日本戦はわずか3試合。大金を払ったのに日本戦を放送できない局も出てくる。競技や種目が多岐にわたる五輪と比べても、W杯は特に割に合わないイベントになりつつある。

 カタール大会の放送のゆくえについては、さまざまな可能性がささやかれている。

「お金のあるNHK」も難しい舵取り

 民放からは「お金のあるNH…

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