福島キュウリは夏に引っ張りだこ 品薄の時期を狙う戦略

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力丸祥子、福地慶太郎
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 夏場になると、東京や大阪などの市場で引っ張りだこになるのが、福島県産のキュウリだ。東京電力福島第一原発の事故後、福島県の農業の苦戦が続くなか、市場関係者から「ぜひ売って欲しい」と頼まれる人気ぶりだ。「福島農業の柱」(地元JA幹部)の強さの秘密を探った。

 福島県北部の伊達市。ビニールハウス内で、高さ2メートルほどの支柱にツルが絡まり、黄色い花を咲かせていた。農家の佐藤清和さん(60)が緑の葉をかき分けると、まっすぐでつやがある長さ約20センチのキュウリが姿を見せた。摘み取ると切り口から水滴があふれ、佐藤さんは「すごいでしょ。このみずみずしさ。今夏もキュウリは福島に任せて」と笑った。

 県内でのキュウリ栽培は1960年代から県中部で本格的に始まった。首都圏に近い地理的な好条件もあり、全国有数の産地に。ハウス内の温度管理や実を傷つけかねない葉や茎の刈り込みなどの栽培技術を磨き、まっすぐな福島県産は「調理がしやすい」との評価を市場で得た。

 都道府県別の収穫量(2020年)をみると、宮崎県(6万700トン、シェア11・2%)がトップで、群馬県(5万5800トン、10・3%)、埼玉県(4万6100トン、8・5%)と続き、福島県(3万8500トン、7・1%)は4位だ。

 ただ、市場で重宝されるのは、その絶妙な出荷時期だ。

 キュウリの出荷は季節ごとに産地が転々とする。宮崎、群馬、埼玉の上位3県が春から6月にかけて出荷した後、福島県は7~9月に集中的に出荷。特に、8月は東京や横浜、大阪の卸売市場でのシェアが4割を超える。

 福島県産の夏秋キュウリは、東日本大震災を挟んで価格が変動してきた。東京都中央卸売市場での価格を見ると、原発事故前の10年度は1キロ当たり262円だったが、12年度には180円に急落した。

 だが、夏場のキュウリのブランド力と、福島県産を扱わないと小売店の棚が埋まらない存在感が相まって、14年度には328円に回復。その後は上昇傾向で、20年度は387円と全国平均を21円(5・7%)上回る。

 震災と原発事故で農業が大きく落ち込み、県内のJAが17から5に再編され、集荷の大規模化が進んだことも、結果的に功を奏した。機械で太さや形を瞬時に判別し、等級ごとに自動選別する大型自動選果施設が各地に整備された。農家の高齢化で徐々に生産量は減る中、負担軽減で生産意欲を下支えする。

 内陸部の会津若松市では20年に集出荷施設「会津野菜館」が完成し、会津全域から集荷されたキュウリの選別を行い、年間2千トンを関東、関西などに出荷する。JA会津よつばの安達一幸・園芸課長は「この10年で『キュウリはもうかる』『キュウリはおもしろい』という認識が農家に広がり、若い人が就農する好循環も生まれている」と話す。

 一方で、県産品全体を見ると…

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