7月27日の高校野球 奈良

篠原大輔 米田千佐子
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 第103回全国高校野球選手権奈良大会(朝日新聞社、奈良県高校野球連盟主催)は27日、準決勝2試合があり、29日の決勝は高田商と智弁学園の顔合わせとなった。両チームが決勝で対戦するのは、中止となった第102回大会を挟んで2大会連続。高田商は58年ぶり2度目、智弁学園は2大会連続20度目の夏の甲子園出場がかかる。高田商は、今春の選抜大会4強の天理に九回逆転サヨナラ勝ち。智弁学園は五回以降にたたみかけ、奈良大付を八回コールドで下した。28日は休養日で試合はない。

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 「奈良県民のほとんどが天理さんが勝つと思ってたはずです。こっちは思い切っていくだけでした」。決勝進出を決めたあと、高田商の赤坂誠治監督が言った。プレーボールから129分間にわたって高田商の挑戦者魂は燃え続け、劇的な勝利を手にした。

 九回表に天理に逆転されたが、誰も落ち込んでなどいなかった。その裏、1死から東口虎雅(たいが)の遊ゴロが失策を誘って二塁へ到達。「出たぞー」。この夏躍動する1年生の出塁に一塁側ベンチが沸く。

 主将の津田侑輝(3年)が右打席へ。初球をたたくとセンターの頭を越す。中継が乱れる間に津田もダイヤモンドを一周。高田商に大歓喜の瞬間が訪れた。

 まず挑戦者魂を示したのが先発の安井直斗(同)だ。過去3試合と直球の伸びが違った。内外角にしっかり投げ分け、四回まで1失点。五回に打ちとった当たりが2点適時打になる不運で降板したが、2番手の合木(ごうき)凜太郎(同)も攻めの投球を貫いた。

 打線は天理先発の森田雄斗(同)から4点を奪って四回で降板させた。2番手の達(たつ)孝太(同)には「8割はまっすぐが来る」(津田)と、低めの直球に絞って3点を奪った。

 「強い相手とやれる楽しさしかなかった」と安井。昨秋、初戦で橿原にコールド負けしたチームとは思えない。大成長した集団が、決勝も明るくポジティブに智弁学園へと挑む。(篠原大輔)

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 反撃のきっかけになる本塁打も一時は逆転となる一打も、主将のバットから出た。今春の選抜大会4強の天理を率いる内山陽斗(はると)(3年)の笑顔が何度もグラウンドで輝いた。しかし試合の幕切れはサヨナラ負け。甲子園に戻れなかった。

 3点を追う四回。先頭で左打席に立つと、三塁側のスタンドで控えの仲間たちが応援してくれる姿が目に飛び込んできた。「集中してたんですけど、応援してくれる表情が分かった。声援も聞こえて、なかなかない打席でした」

 3球目を振り抜くと右への場外本塁打。大きな一発で、劣勢のチームを勢いづけた。「自分だけの力じゃないなと思った。最高の形で1点を取れました」

 3点を追う五回と1点を追う九回は、ともに2点二塁打を放った。4―5からひっくり返す一打となった九回は「まっすぐがいいピッチャーなので、それを狙ってました」。ベンチもスタンドの仲間も大いに沸いた。だが、その裏の守り。逆転サヨナラ打となる打球が中堅手の頭上を越えていった。「これで終わりなんか、と。経験したことのない気持ちになりました」

 全国的な強豪で主将を務め、主軸を担った一方で、順風満帆だったわけではない。高1の12月、長く痛みのあった右ひざの手術を受けた。翌春の選抜大会に出られる可能性もあったが、手術を決断。練習にやっと戻れたのは高2の夏だった。15歳以下の日本代表に選ばれたこともある内野手だったが、外野手に転向した。今春の選抜大会の前に再手術もした。

 再び聖地に立って日本一を。その誓いには、届かなかった。「何て言ったらいいか、分からないです」。笑みを浮かべながらも、出てくる涙をぬぐった内山だが、5打点をあげ、最後までチームを引っ張った。中村良二監督は「彼の意地というか、キャプテンのプライドをすごく出してくれました」とたたえた。(米田千佐子)