健康ならジュースでもコーラでも大丈夫 真夏の水分補給

大脇幸志郎
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 たいへんな暑さですね。筆者はちょっとバテていますが、いかがお過ごしでしょうか。

 暑いときには熱中症もよく話題になりますね。部屋を涼しくして、水分補給を欠かさないようにと言われます。それは正しいのですが、ただ飲み物を飲むだけのことを「水分補給」と難しく言うことに、どんな意味があるのでしょうか。

 この連載は医学知識を横目で見つつ、ちょっと不健康な生活を小声で応援します。ちょっと不健康というのは、たとえば「水分補給」の観点から好ましい飲み物が何かあったとしても、飲み物くらい好きなものを飲めばいいのではないか、ということです。

 水分補給と言えばスポーツドリンクが思い浮かぶ人は多いと思います。スポーツドリンクは塩分を多めに含んでいることと、甘みで飲みやすくされていることで、その名のとおりスポーツをするときの水分補給には手軽で便利なものです。

 ただ、別にスポーツドリンクでなければいけないことはありません。真水を飲むと尿として出る量が多くなり、多少の塩分を含む水のほうが体に残りやすいのですが、その点ではスポーツドリンクの濃度(ナトリウムイオンで20mEq/Lほど)よりもかなり濃いほうがよく残るようです(*1)。

 そこでスポーツドリンクよりもかなり塩辛い(ナトリウムイオン50mEq/Lほどの)、「経口補水液」と名付けられた商品もあります。

 ではスポーツドリンクをやめて経口補水液にするべきかと言うと、これは塩辛くておいしくないという問題があります。

 そもそも真水でも水分補給はできます。効率が多少悪くても、汗をかいた量に対して十分なだけ飲めばいいのです。

 アメリカ小児科学会のガイドラインでは、1時間を超える激しい運動などの場合を除いて、「適切な水分量を維持するためにはしばしば水で十分である」とされています(*2)。

 その意味では、水分補給のためにフルーツジュースやコーラを飲んでもいいと言えます。全米アスレチックトレーナー協会の意見表明(*3)でも「水分補給用の飲料は(…)アスリートの好みに合わせて味をつけるべきである」とされています。

 ただし、もともと糖尿病がある人では「ペットボトル症候群」と呼ばれる問題があるなど、細かい注意はいろいろとあります。しかし持病がなく元気でスポーツでもやろうかという人のほとんどには関係のないことです。

 また、塩分を水に溶かすと塩辛くなるので、食べ物の形で取り入れるという方法もあります。

 全米アスレチックトレーナー協会はそもそも食べ物を優先する考えのようで、「水分補給用の飲料を塩化ナトリウムを含むものにすることは、以下の場合には考慮するべきである:食事をする機会が十分にないか食事をしない場合(…)」としています(*3)。

 食事ができているなら塩分は十分に補給できるはずだから、わざわざ塩辛い飲み物にしなくてよいということです。ちなみに日本人の食事は塩分が多いことで知られています。

 そこまで心配するなら暑い中で運動などしなければよい、という考えも正しいと思います。実際、アメリカ小児科学会のガイドラインは、天候などから熱中症のリスクが高いと思われる場合、運動を「キャンセルするか、より涼しいときに延期する」ことなどを推奨しています(*2)。

 運動が好きで、リスクを冒しても運動をしたい人のために、水分補給などの工夫があるのです。リスクに対策して運動をするか、リスクを避けるために運動をやめるかは、好みの問題です。筆者自身は別に運動したくはないのでリスクを避けるほうを選びます。

 まだまだ暑い日が続きそうです。今年の夏は運動をしないで、スポーツドリンクも飲まないで、コーラとフライドポテトで映画でも見て過ごすのはいかがでしょうか。

*1 Eur J Appl Physiol Occup Physiol. 1995;71(4):311-9.

*2 Pediatrics. 2011 Sep;128(3):e741-7.

*3 J Athl Train. 2000 Apr;35(2):212-24.(大脇幸志郎)

大脇幸志郎

大脇幸志郎(おおわき・こうしろう)

1983年、大阪府生まれ。2008年に東大医学部を卒業後、「自分は医師に向いているのか」と悩み約2年間フリーターに。その間、年間300冊の本を読む。その後、出版社勤務、医療情報サイト運営を経て医師に。著書に「『健康』から生活をまもる」、訳書に「健康禍 人間的医学の終焉と強制的健康主義の台頭」。