熊本決勝、幼なじみ同士が真剣勝負 試合後に歩み寄った

屋代良樹 大木理恵子
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(27日、高校野球熊本大会 熊本工15-2熊本北)

 七回表2死満塁の場面。熊本工のエース吉永粋真(いっしん)(3年)は、打席に立った熊本北の主将藤田大輔(3年)と目が合った。吉永は喜びを隠せず、笑顔だった。「甲子園出場をかけた試合であたるとは」

 吉永と藤田は5歳から同じクラブチームで野球を始めた幼なじみ。互いの家に泊まり、一緒に旅行する仲だ。中学で吉永は硬式のクラブチームに入り、藤田は学校の部活動を選んだ。「高校で戦おう」と約束した。

 今大会のさなかもLINE(ライン)でやりとりした。熊本工が1点差で延長戦を制した準々決勝の後。「ぎりぎりだったね」と藤田がメッセージを送り、吉永は「負けるかもと思った」と返した。準決勝の25日。第1試合で決勝進出を決めた熊本北と、熊本工の選手が球場ですれ違った。「待ってるぞ」。藤田の一言に、吉永は「おう」と答えた。吉永は準決勝で好投した。

 この日も、田島圭介監督から「お前を信じる」とマウンドを託され、絶対的エースは初戦から続けて5戦目の先発を務めた。打たせてとる投球を意識した。

 「戦うときは全力で」(2人が交わしたLINE)。藤田との勝負は一回、ツーシームで飛球に打ち取った。三回は死球。五回は直球を打たれた。

 13点差がついていた七回、打席の藤田も笑顔を向けていた。吉永は外角にツーシームを放った。一ゴロになり、吉永がベースカバーに入って藤田より先に塁を踏んだ。

 九回、熊本北は意地を見せた。2死満塁の好機に、打席は藤田。「藤田を打ち取らないと甲子園には行けない」。変化球でゴロにした。勝利の瞬間、マウンドで両手を高く上げた。

 戦いの後、2人は歩み寄った。吉永は藤田から「いいピッチングだった」と声をかけられた。

 吉永は言う。「小さいときから一緒に野球をして、互いに影響しあってきた。幼なじみの分まで頑張って、一日でも長く甲子園のマウンドに立ちます」(屋代良樹)

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 熊本工のスタンドには黒の学ランと学生帽姿の応援団員10人が並んだ。

 応援団は例年、大きな声で選手にエールを送りながら演舞するなど迫力のある応援をしてきた。今大会は新型コロナウイルス感染対策のため太鼓などの使用は禁止され、応援も声を出さない形に制限された。

 団長の中野仁人(じんと)さん(3年)は2年前の熊本大会決勝でも団員としてスタンドに立った。応援の制限で「今年は少し寂しい感じがする」と話しながらも、「演舞でしか応援できないが、グラウンドの選手たちにも届くよう、きれいに大きく踊れたら」と意気込んだ。

 六回、打者13人の猛攻で8点を追加した場面。拍手を送り、足を曲げて背中を大きくそらす力強い振り付けで応援した。優勝が決まり、中野さんは「自分たちの応援が少しだけ選手の力になっていたらいいな」。大粒の汗を流しながら笑顔を見せた。(大木理恵子)