福島から始まる悲願への道 侍ジャパン、13年ぶりに五輪の舞台に
2008年の北京オリンピック(五輪)以来、13年ぶりに五輪の舞台で行われる野球。競技の幕開けを告げる28日正午からの日本対ドミニカ共和国戦は、決勝までの計16試合で唯一、福島県営あづま球場が舞台だ。日本にとって悲願の金メダルをめざす道は、東日本大震災の被災地から始まる。
「我々は、一球一球、魂を込めて全力で戦う。無観客は寂しいが、福島のみなさんが(テレビ中継などで)それを見て、何かを感じられるように。届けられるように戦いたい」。試合前日の公式会見で、日本代表「侍ジャパン」の稲葉篤紀監督はそう意気込んだ。
今回の東京五輪のテーマの一つは「復興五輪」だ。だが全競技を通して見ても、東日本大震災の被災地が舞台になる試合は決して多くない。だからこそ侍ジャパンの開幕戦には重みがある。
新人ながら本戦で抑えを任される可能性がある栗林良吏(広島)は「(震災が起きた)10年前の気持ちを忘れずに、野球をやらせてもらっていることに感謝したい」と話す。愛知県で生まれ育った25歳がそう言えるようになったのも、今回、代表に選ばれたのがきっかけだった。
投手陣の最年長・田中将大の思いは…
東北で起きた未曽有の災害は「自分の中では、そんなに被害を受けていない。体験もしていないのに語ったら、実際に被災した人に、申し訳ない気持ちになってしまう」ものだったという。それが、父親が送ってくれた被災地の今の写真を見て意識が変わった。
父親は、侍ジャパンが楽天生命パーク宮城(仙台市)で行った強化試合の練習に合わせ、被災地に足を運んだのだという。そこで撮った写真を見て、栗林は「今、野球をできていること、普通に生活できていることに感謝しないといけない。そう改めて思った」。
被災地への思いを抱いて戦うのは、栗林だけではない。今回の投手陣のうち最年長世代の一人で、楽天の選手として発災時から支援を続ける田中将大は言う。「復興という、このオリンピックのテーマがある。東北から始まるということで、いいスタートを切れればいいなと思う」(松沢憲司)
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