「全員が一流選手」野球代表を率いる難しさ 稲葉監督の苦悩と気遣い

野球

井上翔太
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 東京オリンピック(五輪)の追加競技として3大会ぶりに復活した「野球・ソフトボール」は、27日にソフトボールが金メダルを獲得し、28日からは野球が始まった。共通点が多い二つのスポーツだが、日本代表のチーム作りは対照的だ。

 野球日本代表侍ジャパン」の稲葉篤紀監督は以前、雑談で「ソフトボールは代表選手が頻繁に集まるよね」とつぶやいたことがある。少しうらやましそうだった。

 確かにソフトボールは2016年、東京五輪での復活が正式に決まると、頻繁に合宿を重ねた。同年以降、その回数は45。

 前年の15年から、五輪で主力になる選手の世代を「ターゲットエージ」として定め、強化を図ってきた。宇津木麗華監督は「個人の能力を把握しながら、彼女たちができる戦略を立ててきた」。

 合宿中は選手の特徴を生かすと同時に、監督の考えを落とし込んできた。

 一方の野球は17年に稲葉監督が就任してから、プロ野球のシーズン後に行われる国際大会や春の強化試合が、集まる機会となった。当初は「いろんな選手にジャパンを経験してほしい」と積極的に新しい選手を呼んだが、五輪が近づくにつれて、代表への思いが熱い選手に少しずつ絞ってきた。

 ソフトボールは全選手が日本リーグの実業団チームに所属しているのに対し、野球は全員がプロ選手であることも特徴だ。稲葉監督は以前のインタビューで、プロ野球12球団の中から選ばれた「全員が一流選手」を率いる難しさを語っていた。

 「例えば、リードを許していて、『ここを頼む!』と投手を送り出す時、普段のチームで勝っている時に任される投手は、『負けている時か……』と思いがち。そこを『がんばっていこう!』ともり立てるのが、大変」

 だからこそ、声がけを欠かさない。一昨年の国際大会「プレミア12」で、巨人の坂本勇人に、代打でヤクルトの山田哲人を送り出した時のこと。「すまん」。ベンチに戻った坂本に、すぐさま声をかけた。坂本は「全然大丈夫です」と答え、ベンチの最前列で応援したという。

 プロであるが故の特性をいかし、強みに変えて、ソフトボールに続く快進撃につなげることができるか。「侍ジャパン」の戦いが幕を開けた。井上翔太