東北の高校生、富士山頂に立った 田部井淳子の思い継ぎ

斎藤健一郎
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 女性として初のエベレスト登頂に成功した登山家の故・田部井淳子さんが東北復興のためにと力を注ぎ、全国からの支援で続いてきた「東北の高校生の富士登山」(田部井淳子基金主催、朝日新聞社など後援)が2年ぶりに開催され、参加した福島と宮城の高校生14人全員が28日午前、日本一の頂に立った。

 富士宮ルートの6合目(標高約2490メートル)の山小屋に前夜から宿泊した高校生は、午前2時半に霧の中をスタート。真っ暗な道をヘッドライトで照らしながら進んだ。天候も回復し、眼下に雲海を眺めながらの登山になった。

 3千メートル付近で体調を崩す高校生もいたが、田部井さんの長男・進也さん(42)や医療班、登山ガイドらスタッフ計15人がサポート。一歩一歩、上を目指し、全員が午前10時前に標高3776メートルの最高峰、剣ケ峰に到着した。登山には田部井さんの夫で名クライマーとしても知られた政伸さん(79)もサポーターとして参加し、登頂を果たした。

 仙台二華高校2年の堀江麻結子(まゆこ)さん(17)は「もうやめたいと思った時にスタッフや仲間が励ましてくれた。日本一の山に登った喜びより、そのことがうれしい。しあわせな登山でした」と話した。福島県の尚志高校1年、浅田晄和(あきと)さん(15)は「最高の景色が見られました。100点満点でいえば、900点です」と笑顔だった。

 このプロジェクトは福島県三春町出身の田部井さんが「日本一の山を登ることで自信をつけ、東日本大震災からの復興の力になってほしい」と企画し、2012年にスタート。全国から支援を受けて続いてきた。

 田部井さんはがんが進行し、立つことも厳しい状況になった16年7月にも、病院から富士山に向かって標高3千メートルまで登り、「一歩一歩足を進めれば、必ず頂に立てるんだよ」と高校生を励ました。その年の10月に死去。生涯最後の登山になった。

 昨年はコロナ禍で開催できず、今回の高校生の登山は2年ぶりだった。斎藤健一郎