ある特定の国の選手が対戦相手になりそうだから棄権する。こんな事態が東京オリンピック(五輪)でも起きている。政治の事情がスポーツの世界に持ち込まれる現実がある。
スポーツ大臣が棄権迫る?
「イランの選手として、獲得できたはずの銀メダルだ。でも、残念ながらそれはできなかった。モンゴルにメダルを捧げます」
サイード・モラエイ(29)は27日の柔道男子81キロ級決勝で永瀬貴規に敗れたものの、勝ち取った銀メダルを大事そうに両手で包んだ。
問題は2年前、東京五輪の会場、日本武道館で起きた。世界王者として迎えた2019年の世界選手権。母国イラン政府から出場辞退を迫られた。
理由は、勝ち進めば、敵対関係にあるイスラエル選手と対戦する可能性があったことだ。そして、「出場したい」と訴えたモラエイに強い圧力がかかった。「家族の自宅に治安部隊がいるぞ」「これは法律だから従わないと問題だ」。スポーツ大臣も電話で棄権を迫ったとされる。
イスラエルの選手と対戦することを巡り、東京五輪の出場を直前に辞退する選手もいました。記事後半ではその背景を読み解きます。
モラエイは国際柔道連盟(I…
- 【視点】
「国民は一つの共同体として想像される。なぜなら、国民の中にたとえ現実には不平等があるにせよ、国民は、常に、水平的な深い同志愛として心に思い描かれるからである。そして結局のところ、この同胞愛の故に、過去二世紀にわたり、数千、数百万人の人々がか
- 【視点】
パレスチナ支援の運動に携わり、市民権を得てパレスチナ代表として2004年のアテネ五輪に出場しようとしたギリシャの女子やり投げ選手に取材したことがある。「五輪に政治をもちこむべきではない」として出場は認められなかった。 彼女は「なぜ政治