「2個目もいける」と信じていた大橋悠依 プラン通りの逆転優勝

競泳

照屋健
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 プラン通りの逆転だった。

 前半は楽に。大橋悠依は50メートルを5位でターンした。150メートルでも、トップの米国選手と0秒07差の2位。ターンで横のレーンを確認した。

 「もう少し前にいると思ったけど、並んでいたのでいけるな、と思った」

 最後の15メートルは呼吸をせず、追い上げた。「勝っても負けても、全力を出し切ったといえるように」。力む米国選手を残り3メートルでとらえる。タッチ差で上回った。

 最後の自由形は8人で最も速い30秒75だった。

 平井伯昌監督は、「映像を何度見返しても、(相手の)自由形が強いとは思わなかったんだよね」。本来、パワーがある海外勢が優位なはずの自由形勝負でもいけると考え、大橋に伝えていた。2人は「だいたい想定内」と口をそろえた。

 自らの性格は「心配性」。前夜、他の選手のラップタイムを確認し、レース当日の朝に言った。「(2位で通過した)イギリスの選手が気になるんですけど……」

 それを聞いた平井監督は「あんまり考えると、疲れちゃうぞ」と返した。争うのは米国の2選手だと分析していたからだ。「150メートルまでで(大橋を含めた)3人が同じくらいのラップになる」

 その言葉を、大橋は信じた。レース直前、「アメリカの2人はメダルをとりたいから、緊張しているだろうなあ」とつぶやいた。

 日本の競泳で個人2冠を達成したのは、過去に北島康介しかいない。1度金メダルをとった選手は気持ちが切れ、立て直すのが難しい。大橋は違った。

 「どうなるかわからなかった400メートルでとれたから、2個目もいける」。メッセージが殺到するスマホの通知設定をオフにし、自然体で臨んだのが功を奏した。「(北島)康介のときはすべてのレースでリードして勝とうと思った。悠依はそれは無理。一本一本、集中したのがよかった」と平井監督。的確な分析、余裕と大舞台でのしたたかさが、夏季五輪の全競技を通じて日本女子史上初の2冠につながった。(照屋健)