町工場自慢のモーター、突然「兵器」と言われ 社長語る

有料記事フカボリ

鶴信吾
[PR]

 東京の下町で半世紀余り町工場を営んできた男性社長(90)が今月、警視庁に書類送検された。容疑は、兵器に転用できるモーターを中国に輸出しようとしたという内容。社長は40年以上にわたってこのモーターの輸出を続けてきた。社長の言い分や専門家の話をもとに、規制の意味や背景を探った。

 輸出しようとしていたのは、電気信号を機械の動きに変える「サーボモーター」だ。約45年前、東京都大田区にある自宅併用の小さな工場で、試行錯誤を繰り返して開発した。

 当初は売れなかったが、ハリウッド映画で小道具に使われたことで、国内外から注文が殺到するようになった。無線操縦装置や産業用ロボットのアーム、米航空宇宙局(NASA)の機器などに採用されたという。近年は年間に約1千個を出荷している。社長と妻(84)、社員の計4人で作り、出荷先の大半は海外だ。「必死に働き、税金を納めてきた。海外では多少は名前も知れていた」と社長は胸を張る。

 そんな「自慢の商品」が「国際社会の敵」になったのは昨年1月のことだった。国連の報告書で「軍事転用の恐れがある」と指摘を受けた。アフガニスタンで墜落したイランのドローンに使われていたことなどが根拠とされた。

工場に鳴り響く電話と罵声

 経済産業省は直近の販売先だ…

この記事は有料記事です。残り1086文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

【10/25まで】すべての有料記事が読み放題!秋トクキャンペーン実施中!詳しくはこちら

  • commentatorHeader
    福田直之
    (朝日新聞コンテンツ編成本部次長=経済)
    2021年7月29日21時0分 投稿
    【視点】

    日本経済を支えているのは中小企業と言われます。政府の統計によると、製造業の85.7%を従業員20人以下の小規模企業が占めます。この記事に出てくる町工場は4人でNASAの機器に採用されたこともあるモーターを製造していたそうです。その技術力には

    …続きを読む
フカボリ

フカボリ

旬の話題の舞台裏から事件の真相まで、気になるニュースの深層に迫ります。世の中に流れる情報の一歩先へ。「もっと知りたい」「ちょっと気になる」に応えます。[もっと見る]