馬淵監督への最初で最後のわがまま 交代制止したエース

堅島敢太郎
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(28日、高校野球高知大会決勝 明徳義塾5-3高知)

 ブルペンから控え投手がマウンドに向かって駆け出したのが見えた。

 3点を勝ち越した直後の九回裏、明徳義塾の左腕エースの代木(しろき)大和君(3年)は先頭打者に左前安打を浴びた。八回に2点リードを同点にされ、投球数はすでに100を超えている。交代もやむを得ない場面だった。

 「最後まで投げさせてくれ」。代木君はブルペンに向かって手を突き出して交代を制止し、ベンチの馬淵史郎監督には目で合図を送った。

 最初で最後のわがままのつもりだった。打たれれば全責任を負う覚悟で臨んだ。続く打者2人を内野ゴロに打ち取り、適時打で1点を失ったが、最後の打者は外野への飛球を中堅手が好捕。マウンド上で人さし指を立てた代木君の周りに仲間が集まり、歓喜の輪ができた。

 愛媛県出身。甲子園に出るために明徳義塾に進学した。優勝の瞬間のマウンドにこだわったのは、「明徳に来た意味を実感したかったんです」

 高知商との準決勝では苦しんだ。投球が単調になり、相手打線につかまった。先発し、3回3分の1を投げて被安打11、自責点7。甲子園の夢は消えかけた。救援した投手の好投と自身の逆転本塁打などでなんとか接戦を拾った。

 迎えた大一番を前に、前日は70球ほど投げ込んで最終調整した。「初回から飛ばして、かつ完投する」と決めていた。今春の選抜大会以降、磨いてきた内角への直球に、カーブなどの変化球で緩急をつける持ち味を発揮し、七回までを被安打1の無失点に抑えた。

 試合後の整列では、高知のエース森木大智君(3年)と力強く抱き合った。しのぎを削ってきたライバルに感謝の気持ちを伝えたかった。

 「甲子園では目の前の試合を考えて、一つ一つ勝ち上がり、優勝旗を持ち帰りたい」(堅島敢太郎)