みんなで一緒に見たかった 歓声なき熱狂、コロナの五輪

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金居達朗
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 新型コロナウイルスの感染拡大への懸念が拭えぬまま、開幕した東京五輪。世界中から集まったアスリートによる競技が続けられる一方、東京・沖縄には緊急事態宣言、神奈川・埼玉・千葉・大阪にはまん延防止等重点措置が出されたまま、感染者数は日々増加の一途をたどっている。

 史上初となるコロナ下での五輪。輝ける舞台で繰り広げられる日本選手らの活躍を、ひっそりとした繁華街の店内や自宅で、様々な思いを抱きながらテレビ越しに見つめる人たちの元を訪ねてみた。

歓声の消えたスポーツバー

 「ようこそ、東京へ!」

 23日、午後8時過ぎ。大阪の繁華街にあるスポーツバーには客のざわめきも歓声もなく、オリンピック開会式の様子を放映するテレビの音声だけがこだましていた。

 「サルバンチョウSB×2」は、長引くコロナ禍により昨年末から休業が続く。

 「行政が家で見ろと言うんだから、(休業は)仕方がないでしょ」

 かつてはラグビー日本代表として活躍した経歴を持つ、オーナーの長岡法人(のりひと)さん(59)が北新地に店を構えて約10年。2019年に国内で開催されたラグビーワールドカップ(W杯)の時は、10人で満席の店内に一夜で50人を超える客が入るほどの活況だった。だが新型コロナウイルス感染症が急拡大した昨年10月ごろから徐々に客足が遠のき、昨年末に休業を決めた。

「元アスリートとして、五輪の開催は応援している。選手は命がけでこの舞台を目指しているので」。休業での協力はやむを得ないと理解している。

 開会式当日、長岡さんは休業中の店の様子を見に来た。グラスを傾けながら、スマートフォンに入っているラグビーW杯でにぎわう店の写真を見て言った。「懐かしいね」

 午後10時、開会式を半分ほど見て、長岡さんは店のシャッターを下ろした。「店は閉めたけど、五輪も店でお客さんと一緒に笑って見たかったというのは、本音なんだよね」

画面に重ねる、57年前の光景

 24日夜、柔道60キロ級の…

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