書き直された申請書 餓死の無戸籍女性 市との「接点」

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山本逸生、野崎智也
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大阪府高石市の火葬許可申請書のひな型。女性の内縁の夫が死去した際の申請書では、下段の「申請者」欄に修正の跡があったという
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 昨年9月、大阪府高石市で戸籍がない高齢女性が餓死し、同居の息子が保護された。高石市は「過去に母子と接触したことはなかった」としていたが、取材を進めるうち、5年前に市職員が母親と会っていた可能性が浮上した。確かに生きていた母子の存在がなぜ、公には「いないもの」とされ続けてきたのか。

分け合った最後のソーメン

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無戸籍の母子が暮らしていた住宅=2020年12月25日、大阪府高石市、添田樹紀撮影

 女性の遺体は昨年9月22日朝に見つかった。司法解剖で、栄養不足による餓死と判明した。家にいた息子も衰弱しており、府警に保護された。

 母子ともに戸籍がなかった。

 息子を支援してきた関係者によると、息子は保護された際、「8月末に知人がくれたソーメンを母と分け合ってからは、水と塩でつないでいた。無戸籍なので、役所に相談しづらかった」と話したという。

 女性はかつて、内縁の夫で息子の実父にあたる世帯主の男性を加えた3人で暮らしていた。男性は2016年8月に74歳で病死した。母子は男性が残した約300万円を切り崩して生活していたという。

 息子は自称1971年生まれの50歳。「学校に通わず、母から読み書きを教わった。大人になると仕事を転々とし、最近は無職だった」と説明した。「母は1941年生まれの78歳だった。長崎県五島列島出身で、戦争孤児だったと聞いた」とも。

 女性の死が最初に報じられたのは昨年12月だった。当時、記者が取材した高石市幹部は「市が過去に母子から相談を受けたことはなく、困っていたことを知ることは難しかった」と話した。

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無戸籍の女性と内縁の夫、息子の3人がかつて暮らしていたというアパートの跡地=2021年1月26日、大阪府高石市、山本逸生撮影

書き直された申請書

 女性が無戸籍だった理由は定かではない。

 知人らによると、女性は若い頃、東海地方で働いていた。そこで内縁の夫と出会い、高石市に移った。息子が生まれた時も父母は出生届を出さなかった。

 一方、内縁の夫は戸籍を持っており、高石市への住民登録もしていた。

 取材を進めると、内縁の夫が亡くなった直後、高石市役所に死亡届が出されていたことがわかった。

餓死した無戸籍の女性。市役所との間にあったとみられる唯一の「接点」を生かすことはできなかったのか。記者たちが追いかけました。

 いったい、誰が死亡届を出し…

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