バリスタ×パン職人 二組の職人夫妻によるKISOの店

皆木香渚子
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 5年前、あるバリスタとパン職人が九州の地で出会った。話してみると同い年。故郷も同じ愛知県だった。「いつか地元で店を」。そのときの思いが実現しようとしている。それぞれ、同じ道を歩むパートナーを得た。4人の職人が集うパンとコーヒーの店「KISO」は8月5日開店予定だ。

 名古屋市昭和区の準備中の店舗はコンクリート打ちっ放しの内装だ。カウンターと椅子が並ぶスペースの奥には、銀色のオーブンと作業台が暖色のライトを受けて光る。

 「(パンの)高さはそろってて良い感じかな」。試作品を前に、パン職人の加藤耕平さん(33)が話す。妻の美穂さん(27)もうなずいた。

 同じ店で修業していたことがある2人が目指すのは添加物も砂糖、卵、乳製品も加えないシンプルなパンだ。発酵に時間をかけ、焼き上がった後もみずみずしさを保つ。日常の食事に取り入れやすい「物足りないパン」と表現する。

 一方、カウンターにはカップが二つ。バリスタの澤木俊佑さん(33)と彩さん(27)夫妻が試作のコーヒーをいれていた。「水と豆だけから素材ありのままの良さを引き出すんです」

 もともとコーヒーが飲めなかったという2人。ワインのソムリエのように、バリスタはコーヒーの味を比喩的に表現する技術を求められる。「味をとる」というその技術習得のために、一日に何百杯も試飲した。彩さんは半年ほどたったある日、コーヒーの味をたとえることに初めて成功した。その感想は「紅茶みたい」だったという。

 4人が共同の店を出すきっかけは、俊佑さん、耕平さん、美穂さんが同じ福岡市の喫茶店で働いていたことだ。バリスタとパン職人が顔を合わせる機会は少なかったが、5年前、俊佑さんと耕平さんが出会い、意気投合した。

 年が同じで、共に愛知出身という共通点があった。「自然に育った素材」を大切にしようという仕事上の意識も通じるものがあった。自然農法を実践する牧場を一緒に見学したこともある。「お店を開いて愛知を盛り上げようぜ」と夢を温めてきた。

 開店を目指すなかで、職人4人で店作りをする難しさを感じることもある。ドアの色を決めるのに何度も話し合い、塗装作業を全員で見守った。「4人でやるのは『武器』でもある。1人で決めるより磨きをかけた選択肢をとれる」(俊佑さん)という思いは、他の3人に共通する。

 パンとコーヒーを合わせ「一つの料理」として提供するメニューを考案中だ。加藤夫妻のパンに合う飲み物として、澤木夫妻の味覚を生かし、かんきつ類の果汁とスパイスのドリンクを提供する計画もある。

 店名の「KISO」は「地元を流れる『木曽』川と『基礎』をかけました」と俊佑さん。木曽川のように、生活の基礎となる店に育てたいと4人は感じている。

 開店資金を補うため、クラウドファンディングhttps://readyfor.jp/projects/kisonagoya別ウインドウで開きます)にも取り組んだ。すでに目標を上回る230万円余りの支援を獲得。完売したコースも多いが、一部支援は31日午後11時まで受け付けている。(皆木香渚子)