JRの多度津工場改修へ 解体予定の建物ツアーに同行

福家司
【動画】R多度津工場の文化財建物のツアー=福家司撮影
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 JR四国の多度津工場(香川県多度津町)は車両の検査、修理を行う同社唯一の工場だ。老朽化が激しいため、今年度から約10年間をかけて全面改修されることになった。工場敷地内にある、国の登録有形文化財で近代化産業遺産にも認定されている7棟もすべて解体される。9月から取り壊しが始まるのを前に実施された、貴重な建物群をめぐるツアーに同行した。

 7月10、11日のツアーには四国を中心に関西、関東方面を含め57人が参加。産業遺産学会のメンバーの解説を受けながら一つひとつの建物を見て回った。

 まず参加者は、車両を検査を行う建物に移動させるための「遷車台」(1982年製)に乗って敷地内を移動した。

 付き添いのJR職員は「これに人を乗せるのは初めてかも」。台の線路と建物内に続く線路がぴたりと合って止まると、参加者から感嘆の声が上がった。

 工場で最も古い建物は、1888(明治21)年建築とみられる「職場15号」。産業遺産学会の市原猛志・熊本学園大講師が「ここは1941年に埋め立てられた場所なので、工場内のどこかから移築されたと思われます」と解説。

 強度を維持するため外側に斜めに設置された柱の一部を「蒸気機関車の部品という説もある」と説明すると、参加者から笑いがもれた。

 戦時中の物資不足のため木のトラス構造(三角形を基本に部材を組んだ建築物の構造形式)を持つ「倉庫4号」(1941年建築)では、「ここは見ものですよ」と市原さん。

 「(最古の)職場15号では木のトラスだったのが、その後の建物は鉄骨に変わった。それがまた木に先祖返りしている。資材不足の中でも、どうしても建てなければいけない建物だったのだろう」

 9月から始まる工事で最初に取り壊される予定の社員食堂「会食所1号」は、旧西条海軍航空隊愛媛県西条市)の格納庫を1948年に移築したことで知られる。建築年代がはっきりせず、移築した後にかなり改造されたとみられるが、現存する戦前の格納庫は全国でも少ないという。

 参加した高知県香美市の会社員市川良宏さん(45)は「建て替え前の最後の機会となったが、専門家の解説もあり、大変ためになった。木造のトラスを使った建物には驚いた」と話し、「建物の取り壊しは少し残念だが、近代化は災害に強く、職員が仕事をしやすくするためにはよいと思う」と理解を示した。

 産業遺産学会理事長の小西伸彦・就実大特任教授は取材に、「年代が非常に幅広く、鉄道工場の変遷をみていくうえで貴重な産業遺産だ。技術の発展の歴史もわかる」と指摘したうえで、「学会としても地元の多度津町が行う、取り壊し前の調査に協力したい」と話した。

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 多度津工場は当時の讃岐鉄道が1889年、蒸気機関車や客車などの検査修繕施設として開設。その後、国鉄を経てJR四国の工場となった。

 しかし、建物の約7割が築50年以上経過。検査修繕設備も25年以上経過したものが約5割を占め、老朽化が進んでいる。また、ディーゼル車や電車など新型車両が追加されるたびに増築を繰り返したため、部品の移動動線も長く、作業効率が悪くなっている。

 このため、10年間(4期)をかけて、建て替えや設備の更新を実施。動線を短縮するため、建物のレイアウトも変更し、省力化や省人化を図り、作業環境を改善するとしている。

 今年度から3年間の第1期工事では、エンジン作業場の洗浄装置や部品の検査機器を更新し、洗車作業などを機械化する入場前処理場や、資材搬入のための北門も新設する。現在の総合事務所は取り壊し、南側に新たな事務所を建設する。

 国の登録有形文化財かつ近代化産業遺産の7棟はすべて解体。PR室として使われている「諸舎1号」も7棟に含まれるが、保存公開している貴重な資料は、新たな総合事務所に移して展示する方針だ。

 JR四国の西牧世博社長は7月26日の定例会見で「建物や検修機器の老朽化が進んでおり、工場職員の確保も難しくなっている。自動化、ロボット化により省力化、省人化を図りたい。なるべく労力のかからない、効率のよい作業ができる工場にしたい」と述べた。(福家司)