第1回体がずれていく感覚が好き 村上春樹さん語るクラシック

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吉田 純子
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 作家の村上春樹さんが、新著「古くて素敵なクラシック・レコードたち」(文芸春秋)を出し、クラシック音楽について初めて本格的に語りおろしました。コロナ禍のこの1年、自宅でひたすらクラシックのレコードを聴いていたそうです。いま、村上さんにとって、音楽を聴くこととは。音楽を書くこととは。音楽担当の編集委員によるロングインタビューを、2回に分けてお送りします。

 ――自分の好きな曲のページから、気軽に開いて読めるのがとても楽しいです。懐かしい録音に触れるたび、それを聴いていた時期の他の記憶も一緒に、するすると引き出されてくるような感覚になります。

 ああ、それは良かったです。クラシックのCDが売れないと言われている時代に、いったいどういう方がこんな本を手にとってくださるのか、今回ばかりは全く予測ができませんでした。しかも取り上げているのは、50年代からせいぜい70年代前半の、古いLPレコードのことばかりですからね。

 ――中古レコード店に通うときは、まずはジャズのコーナーから物色されて、それで良いのがなければクラシックのコーナーに移ると書かれています。

 ジャズにはずいぶん凝っていたので、クラシックのコレクションの方はあくまで息抜きということにしているんです。買うレコードも、自分の好きな演奏家、指揮者のものだけで、できるだけ安いものを。3千円以上のものは買わないと決めています。僕があらためて本格的にクラシックを聴き始めたのは80年代なんですが、その頃みんな、ちょうどCDに買い替えていたので、中古レコード店に行くと珍しいものが結構たくさんありました。

 ――村上さんも買い替えましたか?

 いや、買い替えなかったですね。

 ――どうして?…

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連載村上春樹さん、クラシックのことを書いてみた(全2回)

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