奈良大会をふり返る 心揺さぶられた九回の攻防

米田千佐子
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 2年ぶりの夏の甲子園を決めたのは、春の選抜大会ベスト8の智弁学園だった。第103回全国高校野球選手権奈良大会(朝日新聞社、奈良県高校野球連盟主催)が29日に幕を閉じた。37チームによる熱戦をふりかえる。

 九回の攻防に何度も心を揺さぶられた。

 開幕試合から劇的な逆転サヨナラだった。奈良女大付―奈良朱雀・奈良商工。3点を追う九回裏、奈良朱雀・奈良商工は戸崎真(3年)のランニング本塁打や3安打などで4点を奪い、サヨナラ勝ち。奈良女大付は1年の飯塚玲偉(れい)が146球、一人で投げ抜いた。「勝てるかも、と少しゆるんだ」と悔やんだ。

 2回戦、奈良―平城。来春の閉校を控え、2人のマネジャーを含めた3年生12人だけで挑んだ平城が先制。奈良が九回表に追いついたが、その裏、平城が山下荘大(そうだい)(同)の適時打でサヨナラ勝ち。吉岡健蔵監督も「こんな筋書き、誰も書けない」と勝利をかみしめた。

 息詰まる投手戦も。2回戦、関西中央は花瀬拓真(同)、御所実は橋本凜太郎(同)が投げ合った。花瀬が御所実打線を抑えるなか、橋本が四回に関西中央に許した1点が勝敗を分けた。橋本は「一点を、一球を大事にしてほしい」と後輩に託した。

 昨年の独自大会への出場を辞退した奈良高専。昨秋、今春の県予選は無得点だったが、今大会1回戦の橿原戦で8得点を挙げた。4点差で敗れはしたものの、2度追いつく粘りをみせた。「昨年出られなかった4年生の分も背負ってやるのは緊張したが、全力プレーで臨みました」。泥だらけのユニホームで松田大輝(同)が胸を張った。

 大会前の予想を覆す激闘もあった。選抜大会4強の天理に、ノーシードから勝ち上がった高田商が準決勝で挑んだ。天理は1点を追う九回表、主将の内山陽斗(はると)(同)の2点二塁打でひっくり返した。その裏、三塁打などで2人をかえされ、サヨナラ負け。五回、森田雄斗(同)からマウンドを引き継いだプロ注目の達(たつ)孝太(同)は「気持ちが入った。いつもなら冷静にいられるのに、冷静にいられなかった」と振り返った。

 天理を破った勢いそのままに、高田商は決勝で智弁学園に迫った。2年前の決勝と同じ顔合わせで、高田商が雪辱を果たせば58年ぶり2回目の夏の甲子園だった。

 1年の1番打者、東口虎雅(たいが)が躍動した。一回表、相手の失策で出塁し、先制の本塁を踏んだ。その裏、智弁学園の猛攻で6点を奪われたが、六回に先頭で二塁打を放ち、また本塁へ。スタンドを沸かせた。六、七回に1点ずつ返し、じりじりと智弁学園を追い込んだ。九回にも1点を奪い、最後まで粘りをみせた。

 智弁学園は5試合28回で55安打47得点。低い打球を意識し、次をねらう走塁で圧倒した。甲子園では2016年に春の選抜大会を制したが、夏の深紅の優勝旗は手にしていない。20回目の夏、初の全国制覇に挑む。=敬称略(米田千佐子)