突然別れた教え子たちへ 「先生はかわいそうじゃない」

高岡佐也子
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 東京パラリンピックで9月1日の射撃(混合エアライフル伏射・運動機能障害SH1)に出場する佐々木大輔(49)は、元小学校教諭だ。

 2009年8月、自転車でトラックとぶつかった。後遺症で胸から下が動かなくなり、車いす生活になった。建設業などを経て念願の小学校教諭になり、その年の春に初めて担任になったばかりだった。

 「佐々木先生にしかできない役割があるから、神様が生かしてくれたんだね」

 事故から約1カ月後。リハビリ病棟へ移ったころ、教え子から親を通じてこんな手紙をもらった。「僕の役割はなんだろう」。自問の日々が始まった。

 当時小学生だった2人の息子がいた。ひとり親として悩んだ末、教諭を辞めた。自分が先に家を出る生活から、2人を学校に送り出す生活に変わった。息子たちを毎日見送ることが「今の僕にしかできないことかな」と思えた。

 幼い頃から柔道に親しみ、体を動かすことが好きだった。11年にリハビリで始めた水泳に本格的に取り組んだ。一方で、自身の体験をもとに作った絵本「あきらとジョニーの『空とぶ車いす』」「あきらとジョニーの『めざせパラリンピック』」の2冊を出版した。

 主人公は交通事故で車いす生活を余儀なくされた少年あきら。「相棒」の車いすのジョニーと会話をかわしながら、冒険する物語を描いた。夏休み途中の事故で、学校に戻れないまま別れた教え子たちが気がかりだった。「事故に遭った自分だからこそ伝えられる」と、挑戦することの素晴らしさを作品に込めた。

 水泳でパラリンピックをめざしていたが、肩の故障を機に、15年に射撃に転向。柔道や水泳で鍛えた体幹と、持ち前の集中力で頭角を現した。今年6月に開催国枠での出場が内定した。射撃を選んだのは、年齢、性別、障害の有無にかかわらず、一緒に楽しめる競技だからだ。

 パラリンピック出場が決まってから、当時の教え子たちから激励や祝福のメッセージが届いた。「突然担任の先生が事故に遭って、子どもたちは怖かっただろうし、僕のことをかわいそうだと思ったと思う。でも、やっと安心させてやれる。パラリンピックで『かわいそうじゃない』僕を見せてあげられるから」高岡佐也子