「パチンコ店でワクチン接種」予約殺到 数千万円損失でも奇策の理由

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矢島大輔
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 「パチンコ店で職域接種を」。大阪のパチンコ店が8月、近隣の商店街組合員や住民らを対象に新型コロナウイルスのワクチン接種を呼びかけると、申し込みが殺到して予約が埋まった。なぜパチンコ店でワクチン接種なのか。珍しい取り組みの狙いを聞いた。

 日本一長いとされる天神橋筋商店街(大阪市北区)近くにあるパチンコ店「フリーダム」。パチンコやスロットの台がずらりと並び、大音量が響く店内の入り口に「ワクチン接種会場になります」と書かれた看板があった。

 接種日は9月13、14日、10月12、13日。この4日間は休業する。ホール内の台に間隔を空けてシールドを挟んで座ってもらい、医師らが巡回してワクチンを打つ。台の上にあるデータ表示器で接種後の15分を計り、体調が悪くならないかチェックするという。

 グループや取引先の企業の従業員と家族のほか、地元の天六商店街振興組合の組合員、近隣住民らが対象だ。18歳以上で、店のカウンターに会員証か身分証を持参すれば予約できる。国から提供されたモデルナ社製ワクチン1500人分について8月17日から予約を受け付けると、26日までに全ての枠が埋まった。

 「ビジネスしてたら地域が大事。自宅で肺炎になって死ぬというのはありえない事態。社会の課題に敏感でありたかった」。同店を運営する会社「アバンス」の平川順基社長(51)は言う。

休業で売り上げ数千万円分消えるけど

 1997年に前身のパチンコ店を開業し、地域密着でやってきた。日頃からパチンコ市場が縮小する中で、「他社とどう差別化するか」「いかにユニークな事業をするか」に頭を悩ませてきた。コロナ下で「密になる」と批判され、パチンコ業界全体への風当たりも気になっていた。

 政府がワクチンの職域接種を呼びかけていることを6月にニュースで知り、「日頃お世話になっている地域に貢献ができて、しかも業界のイメージを変えられる」と思った。その日のうちに「やったらええ」と現場に指示した。

社長からの突然の指示を、現場の人たちはどう受け止めたのでしょうか。ワクチン接種に必要な医療従事者たちはまた、パチンコ店での接種を受け入れたのでしょうか。

 フリーダムの河野晶店長(4…

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