難聴のコーチ、パラ最年少メダリストを筆談で指導 障害の違い超えて

宮坂知樹
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 東京パラリンピック競泳女子100メートル背泳ぎでパラ日本勢史上最年少のメダリストとなった山田美幸選手(14)=新潟県阿賀野市=が、2日に同50メートルで二つ目のメダルに挑む。支えるコーチは、自らも聴覚障害を持ちながら障害者の水泳チームで代表を24年務めてきた。山田選手は、初めて国際大会に送り出した教え子だ。

 コーチの1人が岡野高志さん(45)。水泳チーム「Will Speed Niigata」(WS新潟)の代表だ。WS新潟は、プールや体育室など障害者支援のための施設が入る「新潟ふれ愛プラザ」(新潟市江南区)が1997年にできたのを機に、障害を持つ選手が集まって練習しようと結成された。

 今の所属選手15人は、全盲や脳性まひ、知的障害など様々で、年代も小学生から70代まで幅広い。岡野さんや野田文江コーチ(79)ら3人が指導し、半数ほどの選手は週4回、1・5~3キロを1回で泳ぎこむ。

 岡野さんは5歳からスイミング教室に通い始め、自由形やバタフライで県大会入賞の成績も残した。2歳の頃に難聴となり、今は筆談や、相手の口の動きを読み取って選手と意思疎通している。「理解するのに時間がかかる」と打ち明けるが、ジェスチャーを使い、視覚障害を持つ選手にも声をかけながら腕を触って指導している。

 山田選手との出会いは2012年。夏休みの水泳教室に山田選手が参加し、野田さんの教室に通い始めた後、14年からWS新潟に所属。一昨年から岡野さんが本格的に指導した。「山田さんと障害は違うけれど、自分がどのように競技を続けてきたのか、経験を伝えてあげたい」と話す。

 岡野さんが「一つの目標でした」という世界大会出場を山田選手が実現し、さらに100メートル背泳ぎ(運動機能障害S2)で銀メダル獲得も果たした。岡野さんにとっても大きな節目となった今大会を機にパラスポーツの発展を望んでいる。「重度障害を持つ選手でも(海外の)世界大会に出場しやすいよう、交通などの環境を整えてほしい」(宮坂知樹)