堂々、大名家の名宝 彦根城博物館の収蔵品を毎月紹介

筒井次郎 彦根城博物館・学芸員 奥田晶子
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 国宝・彦根城滋賀県彦根市)にある彦根城博物館は、彦根藩主だった井伊家の伝来品を中心に約9万2千件の収蔵品を誇ります。甲冑(かっちゅう)や能面、茶道具など多彩な名宝を、現在掲載中の琵琶湖文化館(大津市)の「滋宝(しほう)」シリーズの姉妹編として随時紹介します。

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 博物館は城の入り口「表門」の右側にある。江戸時代、ここには彦根藩の政庁と藩主の住まいを兼ねた「表御殿」が250年間立っていたが、1878(明治11)年ごろに取り壊された。

 博物館は1987年、市制50周年を記念して開館した。城跡は特別史跡のため、絵図や発掘調査を元に建物や庭園を忠実に再現した。住まい部分は木造で柱の寸法など細部まで復元。政庁部分は鉄筋コンクリート造りで展示室などを設けた。

 収蔵品のうち、近世初期(室町末期~江戸初期)の風俗図の傑作とされる「彦根屛風(びょうぶ)」は国宝。奈良時代から昭和期までに及ぶ井伊家伝来資料約4万5千件のうち、井伊家文書や太刀など4件は国の重要文化財だ。

 館内の展示は充実している。収蔵品のうち80~90件が常時展示されるが、2カ月ほどで定期的に入れ替えるため、再び出合うのが2年先になる場合もある。さらにテーマを決めた期間限定の展示が年11回ある。

 藩主の住まい部分や庭園も公開されている。館内にある能舞台は、明治期に市内に移されたものを、再び元の位置に移築復元したものだ。学芸員の茨木恵美さんは「展示品だけでなく、館全体で大名家の文化を体感していただけたら」と話す。

 タイトルの「滋宝」は「滋賀の宝」と「至宝」を意味する造語。琵琶湖文化館の題字が琵琶湖をイメージした青なのに対し、彦根城博物館は赤。武具を赤で統一した「井伊の赤備(あかぞな)え」にちなんだ。9人の学芸員が、期間限定の展示品を中心に紹介する。(筒井次郎)

井伊家随一の家宝、宮王肩衝茶入

 彦根藩井伊家2代直孝(なおたか、1590~1659)が、大坂の陣での活躍の褒賞として、徳川家康から拝領した茶入(ちゃいれ)です。茶入は、濃茶(こいちゃ)で用いる抹茶を入れる器で、その用途の重要性と端正な造形美から、特に尊重されてきました。その名品は一国一城に代わる存在ともみなされ、褒賞として用いられることもありました。

 本作は中国・宋代に作られ、「大名物(おおめいぶつ)」と呼ばれるものの一つです。大名物は、多くが足利将軍家の旧蔵品で、古くから世に知られた名品の中でも、とりわけ優品とたたえられた茶道具に冠される名です。

 「宮王(みやおう)」の名は、千利休(せんのりきゅう)の謡(うたい)の師であった宮王三郎鑑氏(さぶろうあきうじ)が所持したことに由来します。その後、戦国武将松井友閑(ゆうかん)から豊臣秀吉に献上され、大坂城の落城で家康の手に渡り、井伊家随一の家宝となりました。直孝はこの茶入を非常に大切にし、取り出す時には袴(はかま)を着用し、手を清めて臨んだと伝えられています。

 本作は大ぶりで、肩の張った堂々とした形に威風を感じさせます。表面に掛かる釉(うわぐすり)の色も変化に富み、魅力ある風情をたたえています。まさに、彦根藩井伊家の礎を築いた直孝にふさわしい風格ある優品です。(彦根城博物館・学芸員 奥田晶子)

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 テーマ展「茶道具の“い・ろ・は”」(9月15日[水]まで)で展示中。井伊直弼(なおすけ)の茶の湯思想の集大成で、「一期一会」の語を用いた著作「茶湯(ちゃのゆ)一会集(いちえしゅう)」も出品されている。一般500円、小中学生250円。9月1日は休み。問い合わせは博物館(0749・22・6100)。