東京五輪は「敗戦処理」 すでにはがれた化けの皮

有料記事新型コロナウイルス

聞き手・真鍋弘樹
[PR]

 五輪選手たちの健闘をよそに、新型コロナ感染拡大が日本の首都を脅かしている。もしコロナ禍に見舞われていなかったら、五輪は日本に益をもたらしたのか。今回の五輪を「敗戦処理」と表現する社会学者の吉見俊哉さんは、東京という都市の実相を研究し続けてきた。これからの東京はどこへ向かうべきなのかを尋ねた。

 ――開催前から、今回の東京五輪を批判していました。

 「多くの意味で、1964年の東京五輪の『神話』から抜け出せていないことが最大の問題です。根本的な価値観の転換もなく、前回の延長線上で、2020年東京五輪を迎えてしまいました。6月の党首討論で五輪の意義を問われた菅義偉首相が、女子バレーの『東洋の魔女』などを挙げて前回の東京五輪の思い出を長々と語ったことがその象徴です。一国の首相ですら、半世紀以上前の成功体験しか語ることがない。なぜ東京で再び五輪をするのか、誰も分からないまま突っ走ってしまった。開会前から、敗戦処理をしているようでした」

 ――当初は東日本大震災からの「復興五輪」とうたわれました。

 「13年に開催権を獲得する際に使われた『復興五輪』という言葉には深刻なうそが含まれていました。それは、震災の被災地は東北なのに、東京で開催するという点です。首都圏の1都3県は総人口3600万人を抱える世界最大の都市圏です。日本の資本の半分近く、情報や知的活動の大半が集中しているのに、さらに五輪のために資源を投下してインフラ整備を進めた。東北の復興という目的とは完全に矛盾していました。被災地の人々は『復興五輪』というスローガンはだしに使われただけ、と見抜いています。本当に東北の復興を目指すなら、東京への集中を逆に抑えるべきでした」

国家として「システム化」されている

 ――なぜ日本は東京で再び五輪をしようと考えたのでしょうか。

東京での再びの五輪について、開催された理由は「三つあります」と語る吉見さん。ノスタルジー、臨海副都心の開発、そして国家の思惑。「日本では途上国のような開発独裁は成立しませんが、『お祭り』と結びつけることで可能になる」という仕組みについても詳しく紹介します。

 「理由は三つあります。一つ…

この記事は有料記事です。残り2912文字有料会員になると続きをお読みいただけます。
今すぐ登録(秋トクキャンペーン中)ログインする

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません。

【10/18まで】有料記事読み放題のスタンダードコースが今なら2カ月間無料!
  • commentatorHeader
    田中俊之
    (社会学・男性学研究者)
    2021年8月4日9時7分 投稿
    【解説】

    吉見俊哉先生は日本を代表する社会学者であり、日本の戦後史に関するご著書を多く執筆されています。吉見先生の日本社会に対する批判的な視座は、ともすると「悲観的」と受け取られてしまうかもしれません。しかし、これは全くの誤解です。あくまで社会学的な

  • commentatorHeader
    プチ鹿島
    (時事芸人)
    2021年8月3日20時27分 投稿
    【視点】

    『なぜ日本は東京で再び五輪をしようと考えたのか』の3つの考察に目がいきました。②「臨海副都心の開発」と③「都市開発に巨額の国家予算を投入するため」を読んで、2年前の朝日の一面を思い出しました。 『神宮外苑 高層化なし崩し』(2019年

新型コロナウイルス最新情報

新型コロナウイルス最新情報

最新ニュースや感染状況、地域別ニュース、予防方法などの生活情報はこちらから。[記事一覧へ]