水中でも乱れぬ髪形の理由 食用のあるもので固めていた

河崎優子
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 東京オリンピック(五輪)のアーティスティックスイミング(AS)競技が2日夜、始まる。この競技で一つ不思議なことがあった。あれだけ水中に潜ったり跳ねたりしても、なぜ髪形が乱れないのだろう。

 選手らの頭は黒光りしている。どうやら髪に何か塗っているようだ。力士が髪を固定している時に使う「びん付け油」でも使っているのかと思ったが、違った。調べてみると、コンビニの「汁物」を持ち帰りやすいようにドロッとさせるのと同じ、食用のあるものが使われていることが分かった。「ゼラチン」だ。

 そもそも、ゼラチンを使うようになったのはいつからか。日本水連AS委員長の本間三和子さんによると、1980年代に米国から取り入れたという。それまでは男性用の固形整髪料「丹頂チック」を塗りたくり、数十本のピンで後れ毛を留めていた。本間さんは「プールの底やシャワー室にはピンがたくさん落ちていた時代。ゼラチンを使うようになってだいぶセットが楽になった」。

 日本代表は1996年のアトランタ大会から、大阪府八尾市にある老舗メーカー「新田ゼラチン」の商品を使っている。代表の木島萌香選手が「髪が落ちてきたことがなくてすごくいい」と絶賛する代物。同社によると、ある偶然がきっかけだったという。

 95年ごろ、元日本代表の小谷実可子さんが国内遠征でゼラチンを持ってくるのを忘れた。宿泊していたホテルの厨房(ちゅうぼう)にあった顆粒(かりゅう)の「ゼラチン21」を分けてもらったという。小谷さんは普段、粉末のゼラチンを使っていたが、水で時間をかけてふやかす必要があり、手間がかかっていた。同社が先駆けて製造した粉末に空気を含んで固めた顆粒タイプは、湯ですぐ溶くことができて「ダマ」にならなかった。

 感激した小谷さんは井村雅代ヘッドコーチ(HC)に報告。井村HCは、知人が関連会社の役員をしていることに気づき、連絡をとった。同社は「アマチュアスポーツを応援したい」と無償で提供するようになった。大会があるたびに500グラム入りの業務用を20袋詰めて送っている。

 同社経営企画部の古川徹さんは「陰で支えになれることを誇りに思う。ぜひメダルを」とエールを送る。(河崎優子)