「取った魚を廃棄させられた。ほんま泣いた」「みんな被曝(ひばく)者を嫌うけん。娘にはだまっちょった」
スクリーンに高齢の漁師たちが次々と映し出される。高知県に住む彼らが語るのは、1954年に太平洋のビキニ環礁周辺でマグロ漁船を操業中、米国の水爆実験で被曝した体験だ。
この記録映像を制作したのは同県四万十町の映画監督、甫木元(ほきもと)空さん(29)。6月中旬から7月初めまで、同県須崎市のギャラリーで展示された。
米国は46~58年、マーシャル諸島で67回の核実験を繰り返した。うちビキニ、エニウェトク両環礁での実験は54年に6回あり、周辺海域では、高知県のマグロ漁船など日本の船が延べ約1千隻操業していたといわれる。
静岡県のマグロ漁船「第五福竜丸」の被曝は大きく報道され、米政府が200万ドル(7億円余)の見舞金を支払う「政治決着」がなされた。それ以外は救済の対象にならなかった。
甫木元さんも2017年に埼…