第10回日本勢が目標とするランナーがかなえた夢 中国選手初の100m決勝

陸上

堀川貴弘
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陸上男子 中国 蘇炳添(31)

 1日夜に行われた陸上男子100メートル決勝に中国選手として初めて進出した。日本選手が89年ぶりに目指し、はるか届かなかったその場所に。アジア勢の可能性を示した快挙だった。

 決勝から2時間半前の準決勝は圧巻だった。スタートから他を寄せ付けない走り。172センチと短距離選手としては小柄だが、小型タンクを思わせるような肉体が突き進んだ。自らが持つアジア記録を0秒08も短縮する9秒83。全体のトップで決勝へ進んだ。

 「9秒83は自分でも信じられなかった。準決勝の組み合わせを見て、命がけで走ってやっと決勝に進めるくらいだと思っていた」。地元メディアにそう語った。

 アジア勢初のメダルの期待がかかった決勝はさすがに遅れた。それでも再び9秒台(9秒98)をマークしての6位。「今日は人生最高の思い出になった」

 この日の決勝進出もそうだが、日本選手が目標とする場所にいつも先にいる。

 2015年に中国選手で初の9秒台となる9秒99を出した。桐生祥秀が日本選手初の9秒台をマークする2年前。世界選手権でも17年ロンドン大会で、アジア選手として初めて8位に入賞した。日本選手はいまだたどりついていない。

 中国広東省出身。11年に神戸で開かれたアジア選手権で優勝したあたりから頭角を現す。五輪は今回で3大会連続、世界選手権は11年から5大会連続で出場している。あこがれは、04年アテネ五輪110メートル障害で優勝した母国の英雄、劉翔だ。

 現在は広州市にある大学の准教授も務める。18年のジャカルタ・アジア大会の100メートルで優勝した後、同年に生まれた長男ら家族といっしょに過ごす時間を増やすために現役引退を考えたという。思いとどまったのは2020年東京五輪があったから。「まだ達成できていない夢があるので頑張ることにしたんだ」とメディアに語っている。今大会でいくつかの夢がかなった。次の目的地はどこになるのか。(堀川貴弘)

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