NTT、五輪向け新技術 感染拡大で一般公開できず

山本知弘
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 多くの企業が、国内外から注目される東京五輪をアピールの場にしようと期待してきた。だが、感染拡大に歯止めがかからず、ほとんどの試合が無観客になり、思惑が外れたところがめだつ。NTTも五輪向けに新技術を開発してきたが、一般への公開はできなくなった。

 日本科学未来館東京都江東区)では7月30日、特設会場が設置され、バドミントン選手が激しくシャトルを打ち合う立体映像が浮かび上がった。靴が床をこする「キュキュッ」という摩擦音や、シャトルの打撃音が臨場感を高める。

 実際の試合は20キロあまり離れた武蔵野の森総合スポーツプラザ(東京都調布市)であった。見る人は、本当に競技会場にいるかのような感じを受ける。それを実現したのが、超高臨場感通信技術「Kirari!(キラリ)」だ。東京開催が決まった2013年から、NTTの研究員たちが構想を温めてきた。

 AI(人工知能)を介して8Kカメラの映像から個々の選手やシャトルの素早い動きをリアルタイムで切り出し、遠隔の会場に表示する。

 この日は、録画した試合だけでなく、リアルタイムでも新技術が対応できることを実証した。

広くPRするはずだった観戦技術

 東京五輪のゴールドパートナーのNTTは、こうした観戦技術を国内外にPRしようとしていた。ただ、感染拡大を受け、この日は特設会場に一般の入場者は入れなかった。

 開発の指揮をとったNTT人間情報研究所の木下真吾さん(52)は「一般公開できなかったのは残念だが、遠隔地でも臨場感を楽しめる技術はコロナ禍で新たな可能性が生まれた」と話す。海外の試合でも臨場感のある観戦を楽しめるとして、NTTはさまざまな競技での応用をさぐる方針だ。

 NTTはほかにも、神奈川・江の島セーリング競技会場で、全長50メートルのワイドビジョンを用意していた。沖で行われる競技の様子を双眼鏡を使わずに目の前で見られるものだ。ドローンや船の4Kカメラで撮影し、切れ目のない映像にして観客に見てもらう。

 NTTドコモは、高速通信規格5Gの魅力をアピールしようとしていた。AR(拡張現実)を活用し、競泳でメガネ型端末を使って記録などの表示越しに泳ぎを見てもらう計画だった。ゴルフでは、5Gによる滑らかな中継を視聴してもらうことをねらっていた。

 だが、こうした新技術の一般客向けの公開は、いずれも断念することになった。大会関係者らへのPRはするが、一般向けに知ってもらう機会を失ったかっこうだ。

 ほかの企業でも見込み違いは相次いでいる。東京・銀座の百貨店、松屋は、外国人客向けの「VIPルーム」をつくったが、五輪による増加は当てが外れた。アサヒビールは五輪にまつわる限定商品の販売を当初計画より縮小した。観戦チケットがあたるキャンペーンをしていた企業では、顧客対応に追われるなど混乱も起きた。(山本知弘)