亡き親友と甲子園への夢 関東第一のエースは天を仰いだ

抜井規泰
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(2日、高校野球東東京大会決勝 二松学舎大付5-1関東第一)

 最後の打者が三振に倒れた。だが、関東第一のエース・市川祐(3年)は、まだ敗れた実感がなかった。ぼうぜんとベンチを出ると、頭の中が混乱したまま整列し、頭を下げた。

 ともに投げ合った相手エースと目が合った。瞬間、手を握っていた。「甲子園で頑張って」とエールを送った瞬間に、自分たちの夢は断ち切られたことに気づいたという。突然涙があふれ、止まらなかった。

 前日の準決勝で、今夏の「東京最速」と目される152キロを出した。連投の疲れを、市川は「多少の肩・ひじの重さはありましたが、試合に影響するレベルではありませんでした」と語った。だが直球に伸びはなく、変化球は上ずった。そこを襲われた。二回に1点。そして七回に試合の流れを失う3点を奪われた。

 1年生だった2年前、市川は背番号11をつけて甲子園のマウンドに立った。「先輩たちに連れて行ってもらい、投げさせてもらいました」。今年は自分がみんなを連れていくと誓っていた。

 もう一人、甲子園に連れていきたい人がいた。

 プレーボール直前、一回のマウンドでいつも、市川は帽子を脱ぎ、胸に手をあて、天を仰ぐ。高校1年のとき、中学時代のチームメートだった親友が亡くなった。「それから、いつも最初のマウンドで空を見つめています。『お前の分まで頑張る。天国から見ていてくれ』と」。誓いは果たせなかった。「でも、見ていてくれたと思います」

 市川はいつも感情を一切表に出さず、淡々と質問に答え、驚くほど客観的にその日の自分を分析する。表彰式を終え、報道陣の前にやって来たのは、いつもの冷静な市川だった。真っ赤に腫らした目だけが、彼が敗戦投手であることを物語っていた。=東京ドーム(抜井規泰)