H難度シリバス、着地ぴたり 村上茉愛が銅「人生で一番いい演技」

体操

山口史朗
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 スペシャリストたちによる、究極の勝負だった。

 体操女子種目別ゆかの決勝で8人中6番目の演技順となった村上茉愛(まい)は、ほかの選手たちを見ながら思った。「みんな完璧な演技をしている。着地を決めないと、メダルは無理だな」

 この時点で3位のメルニコワ(ROC)は14・166点。村上が団体総合決勝のゆかで出した14・066点よりも高かった。

 鍵は冒頭だった。H難度のシリバス(後方抱え込み2回宙返り2回ひねり)。世界で数えるほどの選手しかできない大技は村上の代名詞だ。狙い通りに着地を止めて、勢いに乗った。

 「もうちょっと点が出てもよかったのに」。25日の予選で13・933点だった村上は首をかしげていた。

 2019年はけが、昨年はコロナ禍で、自身にとっては約3年ぶりの国際大会。ダンスやターンの乱れなど、厳密に減点される採点の傾向を感じた。

 その中でも大前提となるのが、やはり着地だ。

 1足分の乱れが0・1点の減点となる。この日は4度の着地のうち、3度をぴたりと止めた。残り1度も、1足分にとどめた。

 得点はメルニコワとまったく同じ。2位のフェラーリ(イタリア)までが0・034点差、5位との差も0・133点の僅差(きんさ)だった。ミスとも言えないわずかな乱れが明暗を分ける争いのなか、「体操人生の中で一番いい演技」で、歴史的なメダルをもぎ取った。

 5年前のリオデジャネイロ五輪で引退するつもりだった。でも、納得の演技ができなくて、「帰ったら練習したい」と言っている自分がいた。

 その後は腰のケガ、1年の延期で何度も泣いた。必死に前を向いてたどりついた集大成の舞台で、心から思えた。「自分に金メダルをあげたい」山口史朗