戦場に届けたサイダー瓶 ノモンハン、元五輪選手の証言

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瀬戸口和秀、編集委員・永井靖二
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 「機関銃で狙われながら走りましてね。食べる物、飲み物、ちょっと我慢してくれって。撃つのが少しやんだら、すかさず持って来てやるからって……」

 生きるか、死ぬか。録音の声は、戦場の様子を淡々と語っていた。

 アメリカの南カリフォルニア大学東アジア図書館。ここに旧日本陸軍の元将校らが、かつて関わった戦争について証言したインタビュー音源が残されている。聞き手は、軍事史研究が専門のアメリカ人歴史家、故アルビン・クックス博士。36人を対象に、計178時間におよぶ。

 その中の1人に、1936年のベルリン・オリンピックに出場した元水泳選手がいた。日本水泳連盟の理事長を務めた故・根上(ねがみ)博氏。自由形の元世界記録保持者だ。

 中国東北部に駐屯した陸軍の部隊「関東軍」で、歩兵第26連隊に所属した。主計少尉として、軍の会計事務を担い、戦場では食料や水の補給役だったという。

 根上氏が調達したもののなかに、サイダー瓶があった。前線に届けられると、のどを渇かせた兵士たちを喜ばせた。しかし、上官の狙いは別のところにあったという。

プレミアムA「砂上の国家 満州のスパイ戦」

朝日新聞は、南カリフォルニア大学東アジア図書館の協力で、旧日本陸軍の元将校らへのインタビュー音源を分析しました。その内容をプレミアムA「砂上の国家 満州のスパイ戦」として特集するとともに、まずノモンハン事件の戦場で運ばれたサイダー瓶をめぐる証言から、お伝えします。

 話は1939年、モンゴル東…

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