「政治献金と思った」 鶏卵汚職、吉川元農水相無罪主張

金子和史
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 大臣在任中に鶏卵業者から現金計500万円の賄賂を受け取ったとして、収賄罪に問われた元農林水産相・吉川貴盛被告(70)の初公判が3日午後、東京地裁で始まった。吉川元農水相は現金を受け取ったことは認めたうえで「政治献金の趣旨だと受け止めていた」などと述べ、無罪を主張した。

ホテル、大臣室……封筒で渡された現金

 一方、現金500万円を政治資金収支報告書に記載していなかったことについては「最大の不徳のいたすところ。大いに反省している」と用意した書面を読み上げた。

 起訴内容によると、吉川元農水相は、大臣だった2018年11月~19年8月、鶏卵大手「アキタフーズ」(広島県福山市)の前代表・秋田善祺(よしき)被告(87)=贈賄罪などで公判中=と都内のホテルや大臣室で計3回会い、総額500万円の賄賂を受け取ったとされる。

 秋田前代表は6月に開かれた自身の初公判で、500万円を提供した贈賄罪の起訴内容について「間違いありません」と認めた。

 秋田前代表の公判で読み上げた検察側の冒頭陳述によると、秋田前代表は18年11月12日、「アニマルウェルフェア(動物福祉)」の理念に基づき、鶏をケージに入れる日本の手法に否定的な飼育基準案を示した国際機関に反対するよう吉川元農水相に要望。9日後の同月21日に都内のホテルで開いた「大臣就任お祝いの会」で、トイレに立った吉川元農水相に「お祝いです」と言って200万円入りの封筒を上着のポケットにねじ込んだという。

 その後、再び要望を受けた吉川元農水相農水省幹部、養鶏業者、農水族議員による三者協議の開催を指示。三者協議の後に日本政府が国際機関に反対のコメントを提出したことを受け、秋田前代表は謝礼として19年3月26日に大臣室で200万円を渡した。

500万円以外にも1300万円 検察は立件せず

 さらに同年8月2日にも大臣室で100万円を渡し、「養鶏業者がつなぎ融資で金を借りられるよう公庫をご指導ください」と日本政策金融公庫の融資条件の緩和も依頼したという。秋田前代表の初公判で読み上げられた吉川元農水相供述調書によると、受け取った500万円の一部は「私的な飲食などに使った」という。

 これらの500万円とは別に、吉川元農水相は大臣就任前の15~18年と大臣退任後の19~20年にも11回で計1300万円を秋田前代表から受け取った疑いがあるが、東京地検特捜部は大臣在任期間以外は職務権限がないとして立件しなかった。

 吉川元農水相は、疑惑が報じられた20年12月に体調不良を理由に衆院議員を辞職。心臓の手術をし、現在は地元の北海道で療養している。(金子和史)