前橋は「セカンドホーム」 南スーダン選手、感謝の快走

斉藤佑介
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 前橋の友人が編んでくれたブレスレットを左手に巻き、国立競技場を駆けた。

 3日朝、東京オリンピック(五輪)陸上男子1500メートル予選。南スーダン代表のグエム・アブラハム選手(22)は3分40秒86の走りで、自己ベストを2秒縮めた。16人中13位で予選敗退となったが、南スーダンの記録も更新し、「楽しんで走ることができた。トレーニングの成果が出せた」と振り返った。

 この1年、コロナ禍で海外選手団が日本での事前合宿を断念するなか、南スーダン選手団は前橋市で約1年8カ月を過ごした。

 東アフリカに位置する母国は、長い内戦の混乱が続き、練習環境が整わなかった。2019年11月に五輪・パラあわせて陸上選手4人とコーチ1人で来日。1年延期が決まった後も、継続した練習環境を求めて、前橋での滞在を延長した。

 「マイセカンドホーム」

 レース後に、前橋のことを第二の故郷と呼んだアブラハム選手。前橋でコーチをしてくれた実業団監督経験もある伊藤泰博さんの名をあげ、「自分のお父さんのような存在」と話した。左手のミサンガも「前橋で出会った友人が作ってくれた」とうれしそうに話した。

 「来日前は日本人がどんな人なのかわからなかった」という。だが、この1年8カ月、日本語学校に通い、コンピューターも学んだ。待ち望んだ五輪出場前には、応援メッセージもたくさんもらったという。

 最も好きな日本語は「ありがとう」だ。

 幼少の頃の呼び名は「アリガ」だった。アラビア語で「困難な状況」という意味という。長い内戦の果てに2011年に分離独立した南スーダンは、その後も衝突と混乱が続いた。

 「自分が生まれたのは国がまだ大変な時だった。ありがとうは、『アリガがいる』という意味もあって、気に入っていました」

 記者からメッセージを求められると、よどみない日本語でこう話した。

 「群馬の人、みなさん、ありがとうございます」斉藤佑介