旧優生保護法の改正放置 国会の「立法不作為」を初認定

岩本修弥
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神戸地裁に入る原告ら=2021年8月3日午後0時49分、神戸市中央区、大下美倫撮影
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 旧優生保護法(1948~96年、旧法)の下で障害などを理由に不妊手術を強いられたとして、兵庫県の5人が国に5500万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が3日、神戸地裁であった。小池明善裁判長は「子どもを産み育てるか否かの意思決定の機会を奪った」として旧法を違憲と指摘。国会議員が速やかに優生条項を改廃しなかった「立法不作為」を違法とする初めての判断を示した。

 ただ、手術から20年の除斥期間が過ぎ、損害賠償の請求権が消えたとして原告側の請求を棄却した。原告側は控訴する方針。

 同種訴訟の判決は6件目で、いずれも原告側の請求が棄却された。旧法を違憲とした判断は、仙台、大阪、札幌に続き4件目。

 訴えたのは、聴覚障害者の小林喜美子さん(88)と夫の宝二(たかじ)さん(89)▽聴覚障害のある80代男性(2020年11月に死去)と妻▽脳性小児まひの鈴木由美さん(65)。

 判決で、小池裁判長は、旧法の立法目的を「極めて非人道的」と指摘。障害者らに不妊手術を実施する条項は、自己決定権を保障する憲法13条や法の下の平等を定めた14条、家族の事項は平等にすべきだとした24条に違反するとし、96年の旧法改正まで国会議員が条項を放置したのは国家賠償法上、違法とした。

 そのうえで、不妊手術を受けた本人だけでなく、子をもうける可能性が奪われた配偶者にも著しい精神的苦痛を与えたと認めた。

 だが、1960~68年の不妊手術から20年たったと指摘。手術当時に提訴するのが難しかったとしても、旧法が改正された96年には手術が不当だと認識できたとし、除斥期間を適用せざるをえないと結論づけた。

 小池裁判長は、条項が半世紀存続し、個人の尊厳が著しく侵害された事実を重く受け止めるべきだとし「多数の被害者に必要かつ適切な措置がとられ、旧法の影響を受けて根深く存在する障害者への偏見や差別を解消するために積極的な施策が講じられることを期待したい」と付言した。

 厚生労働省は「国家賠償法上の責任の有無に関する国の主張が認められたと認識しています」とのコメントを発表した。(岩本修弥)

小池明善裁判長、異例の「付言」全文

 旧優生保護法(1948~96年、旧法)の下で障害などを理由に不妊手術を強いられたのは不当として、兵庫県に住む5人が国に損害賠償を求めた訴訟の判決で、神戸地裁の小池明善裁判長は異例の付言をした。付言の全文は以下の通り。

   ◇   ◇

 旧優生保護法の優生条項が日本国憲法に違反することが明白であるにもかかわらず、同条項が半世紀もの長きにわたり存続し、個人の尊厳が著しく侵害されてきた事実を真摯(しんし)に受け止め、旧優生保護法の存在を背景として、特定の疾病や障害を有することを理由に心身に多大な苦痛を受けた多数の被害者に必要かつ適切な措置がとられ、現在においても同法の影響を受けて根深く存在する障害者への偏見や差別を解消するために積極的な施策が講じられることを期待したい。

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神戸地裁=神戸市中央区