膨大な土砂が阻む生活再建 熱海市伊豆山

村野英一 黒田壮吉、植松敬 中村純
[PR]

 静岡県熱海市土石流発生から1カ月となった3日、消防に第一報があった午前10時28分に合わせて黙禱(もくとう)がささげられた。これまでに22人が死亡、5人の行方が分かっていない。復興に向けた歩みも始まったが、残る膨大な土砂が生活再建を阻んでいる。

     ◇

 「少しでも早く生活再建を支援しないといけない」

 同市の斉藤栄市長は、3日の会見で強調した。しかし、逢初(あいぞめ)川周辺に残る土砂は「撤去には少なくとも2、3カ月かかる」(植田宜孝消防長)とされ、生活再建を阻む要因になっている。

 行方不明者5人の捜索現場では重機の活用が進み、他県の緊急消防援助隊の帰還に続き、消防静岡県隊約130人が3日午前で活動を終えた。

 交代する形で県から入ったのは逢初川流域の「復旧・復興チーム」。これまで土砂は主に捜索のために撤去されたが、チームは復興に向けた土砂の搬出や工事のため、現地調査を進める。逢初川の流域を「安全な形で再生させるのが大きな課題になる」と斉藤市長は語った。

 土石流の流路は、標高約400メートルから伊豆山港まで約2キロに及ぶ。海岸から約300メートル離れた東海道新幹線の線路は堤防のように土砂をせき止め、線路の山側には、今も堆積(たいせき)した土砂が大量に残る。

 土砂は地区を分断し、交通面などで不便な状態が続く。市は7月末に立ち入り禁止区域を縮小したが、避難者の帰宅は進んでいない。避難先の二つのホテルのうち、退去日が6日に迫ったウオミサキホテルには3日正午現在、なお108人が避難。市によると、交通、下水道、体調などへの不安から帰宅が遅れているという。

 土砂はボランティア活動の妨げにもなっている。3日は15人が海沿いの公園付近で泥をかき出したが、7月21日の活動開始以降、1日20人以下の活動が続く。範囲も新幹線の線路より海側に限定され、内容も生活道路や庭先の泥を排除する作業に限られる。

 市は「冷蔵庫が1カ月間手つかずだと、カビなどへの対処が難しくなる。これからマンパワーが必要だ」と指摘。市社会福祉協議会に登録されたボランティア約3900人が活躍できる環境の整備が課題だ。

 全国からは引き続き多くの支援が寄せられている。義援金は2日現在で約4億9096万円に達し、この2週間で約1億9千万円増えた。市が災害復旧に充てる支援金も約3億5800万円が寄せられている。(村野英一)

     ◇

 熱海市伊豆山の捜索現場では午前10時28分、小雨が降る中、警察官らが手を休めて黙禱した。市内でも同時刻に1分間サイレンが鳴り響き、犠牲者を悼む祈りに包まれた。

 川勝平太知事と斉藤栄熱海市長は被害を受けた伊豆山地区を訪れて、黙禱した。川勝知事は「行方不明者の一日も早い発見と被災者支援に全力を尽くす」とあいさつ。斉藤市長は「被災者の生活再建が大きな課題。地元の声をしっかり聞き、被災地の復旧活動を進めていきたい」と話した。(黒田壮吉、植松敬)

     ◇

 東京パラリンピック聖火リレーが、土石流災害のため熱海市内の区間で中止されたことを受け、県は3日、熱海市内を走る予定だったランナーの走行区間を静岡市内に変更することを決めた。リレーは17日、熱海市を出発し、静岡、御前崎、菊川、浜松市をつなぐ予定だったが、熱海区間(1・4キロ)を除いた6・1キロに短縮して実施される。(中村純)