政府は新型コロナウイルス患者の「入院制限」を打ち出した。インドで見つかった変異株(デルタ株)の猛威で医療が逼迫(ひっぱく)するためだが、一部の中等症患者も自宅療養としており、方針転換といえる。容体の急変に十分な対応ができるのか。与野党や医療現場から懸念の声が相次いだ。
「必要なのは、重症化された方々が入院できる病床を常に確保しておくことだ」。田村憲久厚生労働相は3日の閣議後会見で、入院制限の必要性を訴えた。欧米でも感染拡大期は「病床は全然足りなくなり、在宅中心になる」と述べた。
東京都を中心に医療の状況は深刻だ。都内の入院患者数はすでに3351人(3日時点)まで増え、過去最多だった1月12日の3427人に迫りつつある。都で感染拡大時に最大で確保できる病床6406床に対する病床の使用率は2日時点で50%と、最も深刻な「ステージ4」(感染爆発段階)に達した。
一方で、新規感染者数(1週間平均)は3337人(3日時点)と過去最多を更新し続けており、入院者数が急増する懸念が生じている。全体の療養者数も2万7千人を超え、自宅療養者数は1万4千人を上回っていた。
政府高官は「このまま感染拡大が続けば、病床が確保できなくなる」と懸念。厚労省幹部は、「今までは感染制御という目的があったけれど、命を救うための入院に変えた」という。神奈川県は昨年12月に「入院優先度判断スコア」を導入しており、そうした事例も参考にした。別の幹部は重症者らに入院を特化することを「インフルエンザと同じ対応をするということ」と説明する。
具体的な線引きは都道府県任せ
これまで軽症者は原則、宿泊療養としてきた。だが、過去の感染拡大期に軽症患者が入院し、重症患者が入院できなかったケースもあり、そうしたことを防ぐ狙いもある。ワクチン接種が進んで重症化する高齢者が減り、相対的に中等症の患者が増えてきたことも、判断の背景にある。都幹部からは「重症化しやすい高齢者の感染が急減した一方、感染者数が高止まりする現状を考えれば、自宅療養をさらに活用することを考えるべきだ」との意見も出ていた。政府と都は水面下で調整してきた。
しかし、従来は入院対象だっ…
- 【視点】
ついこないだまで「自宅で五輪観戦を」と言ってた菅首相ですが、いつの間にか「自宅で療養を」になっていました。まるでパラレルワールドです。大きな政策転換ですが、一方で首相は「自助・共助・公助」を掲げてきたので今回の表明は究極の自助とも言えます。

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