周りへの感謝を忘れずに、全力で 中日・高橋宏斗投手

構成・仲川明里
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 第103回全国高校野球選手権大会が9日、開幕する。プロ野球中日ドラゴンズの高橋宏斗投手(18)は、中京大中京(愛知)でエースとして活躍した。コロナ下で野球に打ち込んだ思い出や、高校野球で学んだこと、後輩たちへのメッセージなどを聞いた。

 高校での3年間は決して順風満帆ではなかったですね。2年生から背番号1をもらい、夏の愛知大会で投げました。でも、準決勝で誉に(4―5で)負けて先輩たちの夏を終わらせてしまった。当日はストレートも走っていたし、コンディションも一番いい状態でした。結局、運が悪かったのではなく、自分の実力不足でした。「中京大中京が優勝するだろう」。前評判も高かっただけに、余計に申し訳なかった。

 翌日から練習を再開しました。「もうあんな思いはしたくない、絶対甲子園に行く」と精神的にも体力的にも追い込みました。気持ちが折れそうになった時には、指導陣に「お前が先輩たちの夏を終わらせた」と言ってもらいました。それで追い込み続けることができたと思います。

 昨夏の甲子園の中止を知ったときは本当にショックでした。毎日コロナ関連のニュースを見聞きし、覚悟はしていたけど、自宅のテレビで中止決定のニュースが流れた時は「これから何を目標にやっていけばいいんだ」と思いました。

 次の日に学校でチームメートに会った時には泣くわけでもなく、「甲子園がなくなっちゃったなあ」と軽口をたたき合った。必死にふざけることで現実から目をそらそうとしてたんだと思う。皆もそうだったんじゃないかな。

 ただ、愛知県の独自大会があるとのことで、新チーム発足時の目標「公式戦無敗」を最後までやりきろうと、チームがまとまることができた。キャプテンの印出太一(早大)の「俺たちはこんなところで終わるチームじゃないだろう」の言葉もあり、もう一度頑張ることができたんです。

 勝ち続けることにプレッシャーはありました。(独自大会の)決勝もリードは1点だけ。「負けたらやばいなあ」と感じたけど、あれだけ練習してきたんだから大丈夫と言い聞かせました。重圧をはね返し、優勝することができました。

 一番印象に残っている試合は、やっぱり甲子園での交流試合です。(出場が決まっていた選抜大会が中止となり)開催を聞いたときは本当に感謝の気持ちしかありませんでした。高校球児にとって誰もが憧れる甲子園で、1試合でもやれることに意味がある。

 ただ、甲子園は思っていた以上に広く、圧倒されました。強豪の智弁学園(奈良)との対戦で申し分ない相手。試合当日までずっと各バッターの打ち方や傾向などを研究しました。

 先発して、最後まで投げるとは思っていなかったので、初回から結構飛ばしました。三回ぐらいでちょっとしんどいなと思ったけど、九回にはこの日最速の153キロが出た。甲子園というのもあって、きっとアドレナリンみたいなものが出ていたんでしょう。自分の実力以上の力を出すことができたと思います。

 チームも延長タイブレークでサヨナラ勝ち。一番いい勝ち方で、(2019年の秋から公式戦無敗の28連勝を達成し)自分も最高の結果(10回を5安打11奪三振)で3年間の集大成を見せられた。やってきたことは間違っていなかったと実感しました。

 中京大中京で学んだことで無駄だったことは一つもありません。ピンチの場面でマウンドに上がっても、弱気にならずにバッターに向かっていけるのはあの3年間があったから。道具の準備や片付け、礼儀やマナー、バッターへ向かう意識や姿勢。高校野球もプロも変わらないと思います。

 仲間と集まっての練習や試合など当たり前だった日常は、今はもう全部当たり前のことではなくなってしまいました。不安な中で野球をしている人もいるかも知れません。それでも今年は多くの人の支えで夏の大会が開催されます。周りへの感謝を忘れずに、最後の夏を後悔しないよう全力を出し切ってほしいです。(構成・仲川明里)

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 たかはし・ひろと 2002年生まれ。愛知県尾張旭市出身。5歳上の兄の影響で、小学2年生から野球を始める。中京大中京高校では、2年春から背番号1を背負い、昨夏の独自大会では自己最速となる154キロをマーク。昨秋のプロ野球ドラフト会議中日ドラゴンズに1位指名され入団。背番号19。185センチ、85キロ。右投げ右打ち。