難読漢字が目立つ漫画や名前 コロナが生む呪術的世界観

有料会員記事

聞き手・中島鉄郎
[PR]

 「鬼滅の刃」や「呪術廻戦」といったいま人気の漫画には、難しい漢字があふれています。でも、若い世代は違和感なく親しんでいるようです。それはなぜなのでしょうか。漫画事情に詳しい学習院大学の中条省平教授に聞きました。

写真・図版
学習院大学教授の中条省平さん

 ――「呪術廻戦」の第1巻をめくると、「残穢(ざんえ)」「宿儺(すくな)」「鵺(ぬえ)」「鏖殺(おうさつ)」「死蠟(しろう)」といった、旧字も含んだ、おどろおどろしい難読漢字がルビ付きであふれています。

 「そうですね。大人には日常生活で縁もゆかりもない難読漢字がたくさん使われているのに、若い人たちがむしろそれを楽しんでいる。彼らは、漢字の根源的な力を直感的に理解しているんじゃないでしょうか」

 ――漢字の「根源的な力」ですか?

 「はい、そうです。古代漢字研究の第一人者で、70歳を超えて『字統』『字訓』『字通』という3部作を完成させた白川静氏は、漢字の成立について『呪能(じゅのう)』という言葉で説明しました。一部批判もあるようですが、漢字は古代中国において呪術的な力を持つ道具だった、という彼の説は衝撃的でした」

 ――「呪能」とは何でしょうか。

 「よく例に出されるのは、『名』や『告』など漢字でいちばん多く使われる『口』という字です。学校では口を開いた形からこの漢字ができたと教わりませんか? ところが、白川氏はこれは『くち』ではなく、古代の祭器の『サイ』という箱にふたがしてある形だと看破しました。祝詞(のりと)や呪文など人間にとって大事な文字を入れてしまう器だと説明したのです。呪能とは、漢字の成り立ちにこめられた、こうした呪術的な力のことだといえるでしょうか」

記事後半では、コロナ禍がもたらす「呪術的世界観」、おどろおどろしい漢字とキラキラネームに通じるもの、漢字が翻訳された場合の影響について語っています。

■漫画の呪術的世界観への共感…

この記事は有料会員記事です。残り2436文字有料会員になると続きをお読みいただけます。