成長した「あき」が気づいたことは くり返す絵本の幸せ

松本紗知、田中瞳子、石川春菜
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 「ぐりとぐら」、「そらまめくんのベッド」、「こんとあき」……。長く読み継がれてきた絵本には、多くの人の子ども時代や、家族の記憶が詰まっています。今年5月から始めた、絵本の名キャラクターの誕生秘話を探る朝日新聞の連載「きみが生まれた日」には、そんな読者から、約200通の反響をいただきました。久しぶりに、あの絵本を開いてみませんか。

のぞいた新聞に「あ!」

 神奈川県茅ケ崎市川島真理さん(48)は、「そらまめくんのベッド」の記事が掲載された日の朝の、心温まる出来事をメールで寄せてくれた。

 〈まだ家族が起きてこないリビングで新聞を広げていると、5歳のヤンチャ息子が起きてきました〉

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「そらまめくんのベッド」(なかやみわ作・絵、福音館書店)

 記事が掲載されたのは、大型連休最終日の5月5日。朝6時半ごろに真理さんが新聞を読んでいると、長男の碧徳(あおと)くんがやってきた。

 〈チラッとのぞいた新聞に「あ!」っと一言! そして本棚から「そらまめくんのベッド」を持ってきました。新聞と見比べながらうれしそうです〉

 碧徳くんは、20歳と17歳のお姉さんとの3人きょうだい。「そらまめくんのベッド」は、お姉さんたちも小さい頃から大好きで、きょうだいみんなが繰り返し読んだ絵本だった。

 〈何回も何回も読んだ「そらまめくんのベッド」。それをなんと、自分で読み始めました。一文字一文字、指で追いながら声に出して読み出しました〉

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届いた新聞のそばで、「そらまめくんのベッド」を読む碧徳くん=川島真理さん提供

 いつもは真理さんが読んであげていたが、それを初めて、碧徳くんが自分で声に出して読み始めた。真理さんは急いでその様子を、動画と写真に撮った。

 〈覚えたてのひらがなのはずなのに、そらまめくんのセリフには抑揚もついていました! 親バカな感動の朝です〉

 あたたかな気持ちでいっぱいになり、「この思いを誰かに伝えたい」と、初めて新聞社へ感想のメールを送ったという。

 「家族みんなが大好きな絵本。そらまめくん、そして『そらまめくん』を生み出してくれた作者のなかやみわさんに、ありがとうと伝えたいです」

「こんなに小さな女の子だったんだ」

 神奈川県の矢口晃子さん(29)は、家族に「あきちゃん」と呼ばれて育った。「こんとあき」の主人公の女の子と同じ名前だ。母みどりさん(62)が、そのタイトルと絵に引かれ、3歳だった晃子さんにこの絵本を買った。

 晃子さんは家にお客さんが来る度に、「私の本なの」とうれしそうに持ってきて見せていたという。

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「こんとあき」(林明子作、福音館書店)

 連載「きみが生まれた日」で「こんとあき」の記事を読み、晃子さんは久しぶりに本を開いた。

 キツネのぬいぐるみのこんが、汽車のドアにしっぽを挟まれながら、あきと一緒にお弁当を食べている場面。ぺちゃんこになったこんのしっぽに車掌さんが包帯を巻いてあげている場面。

 好きだった場面では、主人公の周りの人の優しさを感じられた。砂丘でこんが犬にさらわれるシーンでは、何度読んでもハラハラしていた気持ちがよみがえった。

 繰り返し読んでいた3歳の頃は、あきがしっかり者のお姉さんに見えていた。読み直してみて、「こんなに小さな女の子だったんだ」と気がついた。

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「こんとあき」を手にする矢口晃子さん(左)とみどりさん=神奈川県大和市

 みどりさんにとっては、あきの成長物語だった。こんに守られていたあきが終盤では、こんを助ける側になっていく。その姿に「冒険して、こういう風に育っていってほしいな」と、晃子さんの成長を重ね合わせていたという。

 冒険は絵本のだいご味だ。みどりさんは「絵本に描かれる冒険のワクワクは、時代に関係なく子供に通じるものがある」。晃子さんは「『さきゅうまち』という知らない町に行く。そのドキドキが好きだったのかもしれません」と振り返った。

絵本を指さし「フィッシュ!」

 「せとうちたいこさん」シリーズを、こよなく愛しているのは、岐阜県白川村の清水朋恵さん(32)。愛媛県今治市出身で、漁師の親戚がよく持ってきて、一番身近な魚がタイだった。それもあってか、子どものころから、タイのお母さんの物語が大好きだった。

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「せとうちたいこさん デパートいきタイ」(長野ヒデ子作、童心社)

 特に気に入っていたのは、遠足に行く話。「タイが遠足行くねんな、と衝撃だった。一方で一緒に行けたらなとも思いました」

 清水さんは昨年、長男の出産を機に仕事を辞め、夫の故郷の白川村に引っ越した。いま、村でカフェをオープンしようと準備を進めている。

 元々コーヒーが好き。英語が話せることもいかし、国内外の観光客が立ち寄れる場所を作りたいと考えたからだ。

 飲食業の経験がない上、コロナ禍。不安もあったが、長男に読み聞かせるため、久しぶりに手にした「たいこさん」の絵本で、「タイが富士山に登ってもいいんやな」と思った。

 「やりたいことを、我慢しなくていい」。たいこさんに、背中を押してもらった気がした。

 まもなく1歳10カ月になる長男の名前は、泰良(たいら)くん。海外でも呼びやすいようにというほかに、「タイ」の響きで決めた。「たいたい」や「たいちゃん」と呼んでいる。

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清水朋恵さんと長男の泰良くん

 まだ話の内容はわからない様子だが、たいこさんたちを「フィッシュ!」と指さして楽しそう。もう少し大きくなったら、一緒に絵本を楽しみたいと思っている。(松本紗知、田中瞳子、石川春菜)

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