記者が甲子園出場校を分析 本命不在、鍵は大会中の成長

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 2年ぶりの夏の甲子園で、深紅の大優勝旗を手にするのはどこか。第103回大会は9日、阪神甲子園球場で開幕する。コロナ禍のなか、全国3603チームが参加した地方大会を勝ち抜いた49の代表校。取材にあたった担当記者が、その戦力を探った。

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本命不在 有力校は

 記者F 絶対的な本命は不在で混戦になりそうだけど、有力校はどこ。

 記者A 出場校中最多5度の優勝を誇る大阪桐蔭は、やはり夏に仕上げてきた印象だ。エース左腕の松浦慶斗が復調し、右腕の竹中勇登は安定感がある。打線も、主将で3番の池田陵真、4番花田旭を中心に切れ目がない。俊足の選手が多いのもこのチームの特徴だ。

 記者B 大阪大会は苦しんだみたいだね。

 記者C 関大北陽との準決勝は延長十四回タイブレークの末に制し、興国との決勝は九回サヨナラ勝ち。接戦を勝ちきった経験が甲子園でも生きそうだね。

 記者D 今春の選抜大会1回戦で大阪桐蔭を破った智弁学園も力がある。

 A 1年夏から甲子園を経験する右腕の小畠一心、左腕の西村王雅、強打者の前川右京の3人が柱で、投打のバランスがいい。前川は春の不振から抜け出し、力強さが増した。奈良大会の打率は6割を超えた。

 記者E 智弁和歌山も強打が健在だ。徳丸天晴(てんせい)は1年夏から4番に座った。

 F 和歌山大会決勝では全国屈指の右腕、市和歌山・小園健太を終盤に攻略した。3度目の頂点を狙える力は十分にある。

 C 関東勢はどうかな。

 B 横浜は打線につながりがある。状況に応じて右方向を狙うなど、一人ひとりに器用さもあり、神奈川大会のチーム打率は4割6分を超えた。投手陣も1年生の左腕・杉山遥希が大会中に成長し、厚みが増した印象だ。

 F 総合力では浦和学院も負けていない。主将で4番、強肩捕手の吉田瑞樹が攻守の要。57歳の森士(おさむ)監督は今大会を最後に退任する。有終の美を飾ろうと、選手たちは気合が入っているよ。

 E 激戦区の愛知を勝ち抜いた愛工大名電も、力があるよね。

 D 愛工大名電も含め、愛知で「私学4強」と言われる東邦、中京大中京、享栄とライバル3校を次々に破っての優勝だからね。初めての夏の頂点に手が届く位置にいるよ。

 A 今年はコロナ禍による練習不足で、全体的にチームの仕上がりが遅れている印象を受けた。地方大会で経験を積み、さらに甲子園の大会中にどれだけ成長できるか、が優勝争いの鍵を握りそうだ。

追う勢力

 F 選抜準優勝の明豊の名前がまだ出ていないね。

 A 相変わらず投手力が高い。選抜は京本真、財原光優、太田虎次朗の3本柱が活躍した。1年生の森山塁が台頭してここに加わり、京本は球威、制球力の面でさらに成長した印象だ。選抜5試合で無失策だった守りも堅いし、広角に打てる黒木日向、米田友を中心に着実に得点できる。

 B ただ、1回戦の相手、専大松戸も強いよ。右横手の好投手、深沢鳳介(おうすけ)に加え、岡本陸も成長し二枚看板になった。左翼手の吉岡道泰は選抜の中京大中京戦でダイビングキャッチを試みたけど届かず、決勝のランニング本塁打を許した。その吉岡が千葉大会決勝でサヨナラ満塁本塁打を放った。甲子園に戻ってきた彼のプレーが楽しみだよ。

 C 接戦になりそうだね。経験豊富な実力校、明徳義塾と県岐阜商も初戦からぶつかるよ。

 E 明徳義塾の代木(しろき)大和はカットボールを軸に大崩れしない左腕。高知大会決勝では高知の世代屈指の右腕、森木大智に勝った。野手も併殺をしっかりと取る守備力と小技を絡めた幅広い攻撃力を備える。

 D 県岐阜商は左腕野崎慎裕に抜群の安定感があり、捕手の高木翔斗は守備面だけでなく、長打力を秘めた強打者。ほかの野手もコツコツとつなぐ打撃がうまい。

 A 65歳の明徳義塾馬淵史郎監督は甲子園通算51勝。70歳の県岐阜商・鍛治舎巧監督は秀岳館(熊本)を率いて2016年春から3季連続甲子園4強の実績がある。2人の采配も見どころだね。

 B 選抜8強の東海大菅生は打線に磨きをかけて甲子園に戻ってきた。4番小池祐吏が打率1割台と苦しんだが、長打力のある1番千田(ちだ)光一郎、3番堀町沖永(おきと)らが引っ張って激戦の西東京を制した。5人が登板するなど投手陣も豊富で、初戦の大阪桐蔭にどうぶつかっていくか。

 F 東東京代表の二松学舎大付にも注目したい。左腕、秋山正雲は球に切れがあり、制球力も問題なし。右打者の内角に投げ込む直球の完成度は高い。東東京の決勝で関東第一の好右腕を打ち崩した打線も力がある。

 E 近江も投打のレベルが高い。ともに140キロ台後半の球威を誇る右腕、山田陽翔が試合を作り、岩佐直哉で締めるのがパターン。滋賀大会準決勝、決勝を無失点で勝ち抜いた。山田は4番としても9打点と勝負強い。

 C 兵庫を勝ち抜き、春夏連続出場を果たした神戸国際大付も力がある。投手の層が厚くエースナンバーを背負う左腕・楠本晴紀は直球に力があり、速球派の右腕、阪上(さかうえ)翔也の復調も大きい。打線は7本塁打を記録するなど選抜よりも長打力を増した。

上位視野に入れる

 F コロナ禍で多くの学校が打者の実戦不足に悩まされた。投手力のあるチームが上位を狙えそうだ。

 B 明桜の風間球打はスケールが大きい注目の右腕だ。身長183センチで最速は157キロ。変化球もよく、狙って三振を取れるタイプ。打線の援護が鍵だろう。

 E 南北海道大会で150キロを計測した北海の左腕木村大成もプロ注目。選抜では1回戦敗退だっただけに成長した姿を見たい。

 D 静岡の192センチ右腕高須大雅もいい。静岡大会は4完封で計37回を無失点。140キロ前後の球速表示以上の伸びを感じさせる。

 F 初出場の鹿島学園の薮野哲也は変化球を交ぜて淡々と投げるタイプ。3種類のスライダーを操り、なかなか打てなさそう。

 C 広島新庄も投手力は高いよね。右腕花田侑樹に左腕秋山恭平と選抜時の二枚看板に、急成長の西井拓大(たくと)が加わった。昨夏の交流試合を経験した二遊間、大可尭明、瀬尾秀太が守備でもり立てているよ。

 B 打線がいいチームも目立つ。

 A 京都国際は京都大会決勝で2ランの中川勇斗が勝負強い。2年生の森下瑠大(りゅうだい)をうまくリードする強肩の捕手でもある。

 E 沖縄尚学も主将で3番の遊撃手仲宗根皐(こう)が攻守の要。打率は6割を超え、決勝では決勝打を放った。

 A 強打のイメージが強い盛岡大付は4年ぶりの夏だね。金子京介は岩手大会で5試合連続の本塁打。びっくりしたよ。

 C 前橋育英の4番皆川岳飛も群馬大会で3試合連続本塁打を放った。エース外丸東真(あづま)を中心に守備も手堅く、総合力が高い印象だ。

 F 敦賀気比日本文理北信越対決は好ゲームになりそう。敦賀気比は昨秋、今春の北信越王者。選抜では常総学院に敗れたが、八回に追いついてタイブレークに持ち込む粘りを見せた。日本文理も2年生エースの田中晴也を擁し、手堅い試合運びができる。

 D 三重は三重大会の1回戦で65点を奪うなど、チーム打率が5割を超えている。飛び抜けた存在はいないけど、上位から下位までしっかり振ってくる。

旋風に期待かかる

 B 中止の昨年を挟んで10大会連続出場の作新学院は守りが堅いね。佐藤優成、林拓希(ひろき)の2投手を軸に、5試合で7失点と大崩れしない。

 F 25年ぶりに夏の1勝をめざす高松商は打線に粘りがある。香川大会準決勝は九回に4点差をはね返し、決勝も終盤に逆転勝ちした。競り合いに強い。

 D 西日本短大付も負けていない。準決勝では6点差をひっくり返して勝ち上がった。エースの大嶋柊を中心に、投打のバランスがいい。

 C 37回目の出場となった古豪の松商学園は、チーム打率が4割を超す。打率5割超の間中大介、織茂秀喜ら上位打線に力がある。

 E 樟南は鹿児島県勢で最多となる20回目の出場だ。西田恒河(ごうが)を大黒柱に、6試合で1失策と守りがしっかりしている。

 D 小松大谷は夏は36年ぶり。北方慈也と、外野も守る吉田佑久が投手の二枚看板。4番の奥野真斗が石川大会決勝で3打点と調子を上げてきたのが心強い。

 A 島根大会決勝では石見智翠館の右腕、山崎琢磨が、15奪三振で無安打無得点試合を達成。左腕3人もおり、投手層が厚い。

 B 機動力に注目したいのが日大山形。秋葉光大、新田大樹の1、2番はそれぞれ7盗塁。チーム全体でも23盗塁と走ってくる。

 E 打率は3割を切るけど、宮崎商は5試合で14犠打を決めた。エースの日高大空を中心にした堅実な野球が身上だ。

 B 計7本塁打の弘前学院聖愛も楽しみな存在。打ち合いを制してきており、勢いに乗ると怖そう。

 F 日本航空の左腕ヴァデルナ・フェルガスは、長いリーチを生かした投球が特徴。右打者の内側を攻める変化球に注目したい。

 C 富山大会の3試合で2桁得点だった高岡商は、ロースコアの接戦も強い。投は川渕恒輝、打は石黒和弥が柱だ。

伝統校やフレッシュなチーム

 D 公立の伝統校やフレッシュなチームも集うね。

 A 帯広農は39年ぶりの出場だね。計62得点と攻撃力が持ち味。清水椋太は長打力がある。

 C 米子東もチーム打率が4割超。太田舷暉は5本塁打とパンチ力がある。

 D 九州の伝統校対決がある。

 B 長崎商は長崎大会決勝で選抜出場の大崎を破った。無失策と守備が堅実。城戸悠希、田村琉登ら投手陣が鍵を握りそうだ。

 A 相手の熊本工は打線が好調だった。目立つ長距離打者はいないけど、個々のつなぐ意識が高い。

 C 倉敷商は接戦に強い。岡山大会は準決勝、決勝をサヨナラ勝ちした。山下周太は打率6割超と好調だった。

 D 阿南光は阿南工と選手権出場1回の新野(あらたの)が統合してできた。4試合で総失点は3。左腕の森山暁生が踏ん張った。

 B 同じ四国の新田は夏は初出場だね。

 F 1990年の選抜は初出場で準優勝し、「ミラクル新田」と呼ばれた。長打力のある古和田(こわだ)大耀(たいよう)を中心に旋風の再現を狙う。

 E 東明館は「がばい旋風」を起こした佐賀北を破って、春夏通じて初の甲子園切符をつかんだ。捕手の加藤晴空(そら)が攻守の要だ。

 C 東北学院も初出場だ。エースの伊東大夢が投打の中心で、6試合のうち5試合が逆転勝ちと粘り強かった。

 F 日大東北は18年ぶりだね。12盗塁と足を絡めた攻撃が得意だ。犠打も多く、堅実な攻めが光る。

 E 高川学園も機動力が魅力だ。4盗塁の源卓ら俊足の選手が多く、少ないヒットで得点を狙える。

座談会出席者

東京:坂名信行

名古屋:山田佳毅

大阪:山口裕起、大坂尚子

西部:菅沼 遼

編集委員:安藤嘉浩