まん延・ひっ迫…気になる交ぜ書き 難読漢字ダメですか

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聞き手・富田洸平 聞き手・稲垣直人 聞き手・中島鉄郎
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 最近よく見る「まん延防止等重点措置」や「医療ひっ迫」――。常用漢字でない字にひらがなを使うのを不自然と感じる人は多いようです。パソコンやスマホで漢字変換できる今、難読漢字に抵抗はない人も増えています。私たちと漢字のかかわりを考えました。

「社会生活で書き表す場合の目安」常用漢字は2136文字

 常用漢字は1981年、内閣の告示によって定められ、2010年に一度改定されました。現在、2136字あります。

 常用漢字の定義は「法令、公用文書、新聞、雑誌、放送など、一般の社会生活において、現代の国語を書き表す場合の漢字使用の目安」。有識者でつくる国の文化審議会国語分科会で審議し、決まります。

 10年の改定では、出版物などでよく使われるようになった字として196字を追加した一方、あまり使われなくなったとして5字が削除されました。改定の時期はとくに決まっていません。

 あくまで「目安」なので、守らねばならない規則ではありません。ただ、学習指導要領では、義務教育を終えるまでに、だいたいの常用漢字が読め、書くことにも慣れることが求められています。

 この常用漢字に伴って起きるのが交ぜ書きの問題です。例えば、「まん延」は「蔓延」、「ひっ迫」は「逼迫」、東京五輪で日本人選手が17年ぶりに銅メダルを取った体操の「あん馬」も「鞍馬」と書けますが、「蔓」「逼」「鞍」は常用漢字ではないため、常用漢字だけを使うなら、ひらがなと交ざります。

 交ぜ書きの読みにくさは、作家や学者らから再三指摘されてきました。6月3日付の本紙「論の芽」で、見た目の不自然さを指摘する古田徹也・東大准教授の意見を紹介したところ、多くの読者から「たしかに読みづらい」「『自分』を『自ぶん』と書くようで変」といった意見が寄せられました。

 交ぜ書きが議論になるのは、新聞やテレビ、ネットで交ぜ書きが散見されることも一因のようです。報道で使う漢字はおおむね常用漢字に基づいていますが、厳密には100%依拠しているわけではありません。新聞・通信社、放送局が加盟する日本新聞協会には各社の校閲担当者らが集まり、記事の言葉遣い・表記の原則を決める「新聞用語懇談会」があり、常用漢字ではないが記事では使えるとする字を例外的に取り決めています。実際に社会でよく使われる、などといった理由からです。 

 各メディアはここでの議論をベースに自社で使える漢字を決めます。朝日新聞も20年前から交ぜ書きを減らす取り組みをしています。「蔓延」も読み仮名(ルビ)付きで書くようにしていますが、重点措置の「まん延」については、法令用語自体が交ぜ書きであるため、例外的に交ぜ書きにしています。(稲垣直人)

難しい字ならではのイメージに魅力、執筆では交ぜ書きは避ける 南沢奈央さん(俳優)

 中学生の頃、友達から薦められたのがきっかけで、読書にはまりました。視覚的に入ってくるのは文字だけなのに、世界が広がりました。そこから、漢字にも興味を持つようになりました。漢字のなかに「貝」が入っていると、お金を表すと知って感動したことは今でも覚えています。高校生のとき、受験勉強もかねて日本漢字能力検定の2級を取りました。最近では漢字のクロスワードが好きです。

 ふだん読書をしていて、読めない漢字があると悔しい一方で、うれしくもなります。まずは意味を想像して読む。そのあと、偏やつくりで検索して、こんな意味や読み方があるんだと覚えたり、手書きで書いてみたりします。いまは学生でなくなって、新しい知識を得たり、手で書く機会が減ったりしているので、読書を通じて漢字に触れることは大事だなぁと感じます。

 漢字と向き合うのは面白いです。「憂鬱(ゆううつ)」の「鬱」は難しい字ですよね。これをそれぞれのパーツに分解して見てみたり、なんでこんな漢字になったんだろうとあれこれ想像してみたり……。そう、漢字を見たときに浮かぶイメージってありませんか? そんな漢字の持つ温度感や質感も魅力です。漢字から受け取る意味やイメージは大きいと思うので、大切にしています。

記事中盤では、産経新聞元校閲部長の時田昌さんが「漢字で書く熟語は全て漢字で表すのが自然」といいます。後半では、学習院大教授の中条省平さんが、「鬼滅の刃」「呪術廻戦」に通ずる難読漢字の奥深さを語ります。

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