生まれ変わっても「卓球やらない」 張本智和、若きエースの悩み

卓球

吉永岳央
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 もし生まれ変わっても、卓球をやりますか――。

 日本卓球男子のエース、張本智和に聞いたことがある。2019年夏だった。

 「やらないですね。今、この状況だったらやらないと思います。スポーツはやりたいけど、負けても楽しいと思えるくらいで」

 早くから将来を嘱望されてきた。13歳で世界ジュニア選手権を制し、当時の史上最年少記録をつくった。全日本選手権でも14歳の最年少優勝記録を持つ。この手の記録を挙げれば、きりがない。

 栄光の軌跡は同時に、重圧と向き合う日々でもある。

 顔が知られているから、コロナ禍の前から外出時のマスクは必須だった。「周りに誰もいないことを確認して、たまに外すのが好きでした。『うわー、めっちゃ気持ち良いな』と」

 両親は中国の元選手。SNSを開けば、そんな背景を差別するような書き込みがやまない。「慣れました。気にしてもしょうがないなと思っています。(五輪の)金メダルを取っても、言う人は言うと思うので」と語る。

 コロナ禍の息抜きを聞いた時は「映画」と言った。試合続きの中では、見ることができなかったという。「激しい気持ちの変化を(普段は)あんまりつけたくないので。(試合がなくなって)楽しい映画を見られたのはよかった」。少しでも卓球の邪魔になるものを、生活の中から取り除いてきた。

 高校生活でも、同級生がうらやましい時がある。「授業が終わったら、みんな『部活に行こうぜ』みたいな。でも、僕はすぐに帰るだけ。(クラスメートが)楽しそうだなって」。放課後は常に、世界レベルの練習が待っている。

 普通の10代ならしない経験を重ねてきたから、張本の言葉は落ち着いていて、憂いが透ける。「金メダル、金メダルって言われるのがしんどい時も、ちょっとあります。昔みたいに、試合ができるだけでもうれしかった自分に戻りたい」と語ったこともあった。

 ただ、多くの犠牲を払っても、張本は五輪の金メダルを欲している。「自分が卓球を始めた頃からの夢なんです」

 何より、どんなに苦しくても、勝った時の喜びに勝るものはないという。「日本卓球界と言えば張本って言われるような時代を作りたい」。シングルスはまさかの16強で敗退。18歳のエースが、団体のメダルを目指して歯を食いしばっている。吉永岳央