北朝鮮政府相手の訴訟で10月にも弁論へ 東京地裁

編集委員・北野隆一
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 在日朝鮮人らの帰還事業で北朝鮮に渡った後、同国を脱出し日本に戻った脱北者5人が北朝鮮政府を相手取って総額5億円の損害賠償を求めた裁判で、東京地裁が10月中旬にも第1回口頭弁論を開く見通しとなった。原告5人や専門家の尋問も認められそうだという。原告側が5日、記者会見で明らかにした。

 原告は東京都在住の川崎栄子さん(79)ら1960~70年代に北朝鮮に渡り、2000年代に脱北した5人。訴訟では、北朝鮮が「地上の楽園」と宣伝し在日朝鮮人をだまして帰還事業に参加させ、抵抗すると弾圧して出国を許さないなど、基本的人権を抑圧したと主張。「帰還事業は北朝鮮による国家誘拐行為だ」と訴えている。

 北朝鮮政府を相手取った訴訟は異例。国際法には「国家には他国の裁判権が及ばない」とする「主権免除」原則がある。原告側は、2010年施行の「対外国民事裁判権法」の国会審議などで政府が「未承認国に裁判権免除を認める法的義務はなく、主権免除の対象外」と述べたことに着目。「日本が国家承認していない北朝鮮には裁判権が及ぶ」と主張しており、地裁の判断が注目される。

 東京地裁は18年の提訴以来6回、原告側と協議した。北朝鮮とは国交がなく、大使館など政府を正式に代表する機関も日本国内にない。東京地裁は、訴状など関係書類の送付先がないことを前提に、裁判所の掲示板に書類を一定期間貼り出すことで被告側に届いたとみなす「公示送達」を行ったうえで、口頭弁論を開く方針とみられる。(編集委員・北野隆一