「小さな行動始めよう」 広島原爆の日、知事あいさつ

核といのちを考える

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 広島への原爆投下から76年となる6日、広島市中区平和記念公園で平和記念式典が開かれた。広島県湯崎英彦知事が読み上げたあいさつは以下の通り。

     ◇

 本日、被爆76年を迎えるにあたり、原爆犠牲者の御霊(みたま)に、広島県民を代表して、謹んで哀悼の誠を捧げます。

 そして、今なお、後遺症で苦しんでおられる被爆者や、ご遺族の皆様に、心からお見舞い申し上げます。

 我々は、被爆者の証言、平和記念資料館に展示された原爆の記憶などから、この地で、多くの無辜(むこ)の市民が、苦しみながら、水を求め、亡くなったことを知っています。

 これは、思い出すことすら耐えがたい当時の記憶を呼び覚まし、現実に基づいて証言を続けてきた被爆者の方々の存在があるからです。

 今年1月に発効した核兵器禁止条約は、被爆者の証言が大きな原動力になったと言われています。

 しかし、次世代に連綿と記憶をつないできた証言者は高齢化し、私たちの想像や関心をつなぎとめ、時に世界のリーダーを突き動かす記憶の伝承が危機に瀕(ひん)しています。今こそ、一刻を争う事態として、核兵器と向き合う必要があります。

 一人ひとりの行動は小さなものでも、予想もできないような連帯をつくり出し、世界の時流を変える力となる例もあります。

 地球環境問題では、北欧の15歳の少女が、国会前で学校ストライキを始めたことに端を発し、世界中の若者を巻き込みながら、ついには各国の大臣や国連事務総長まで動かす力となり、地球環境問題の進展に大きな影響を与えました。

 重要なことは、このグレタ・トゥンベリさんの第一歩のみならず、若者の一人ひとりがそれを他人事(ひとごと)とせず、声をあげていったことです。人々の関心が呼応すると、様々な社会活動を通じ、論争も巻き起こしながら、より良い社会を共に築いていく原動力が生まれます。

 気候変動や教育、ジェンダー平等への関心の高まりは、一国一国のリーダーの考え方を改めさせ、SDGsとして世界の共通言語となり、大きな潮流となっています。

 力がないと思われるかもしれない一人ひとりが関心を高め、小さな行動を始めることで、叡智(えいち)が集まり、共感を広げ、国のリーダーの行動を促し、世界の枠組みをも変えていきます。

 世界はこの一年半、新型コロナウイルス感染症と闘ってきました。このようなパンデミックは、専門家が警鐘を鳴らしていたにも関わらず、我々は十分な注意を向けていたとは言い難く、準備はできていませんでした。その結果、これまでに世界で約2億人がこの感染症にかかり、400万人を超える人々が命を落としています。

 核兵器も、その運用の責任を負っていた核兵器国の大臣や軍人を含め、多くの専門家が、人類と地球全体に存亡の危険をもたらす、今、そこにある現実的危機だと警鐘を鳴らしています。我々は、核兵器についても、パンデミックと同様にその危険性を見過ごし、いずれその報いを、人類と地球の破滅という形で受けるのでしょうか。

 人類存続への道を啓(ひら)くためには、一人ひとりが関心を持ち、核兵器存続という愚行へ対峙(たいじ)するほかありません。

 広島からも、新たな行動を始めます。核兵器廃絶が、国連における一致した目標となるよう、働きかけを強めていきます。

 このパンデミックで苦しんでいる今こそ、一人ひとりが立ち上がり、力を合わせ、人類存続の危機に立ち向かっていきましょう。

 令和3年8月6日 広島県知事 湯崎 英彦

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