スマホで映したリアルな絶望 アフガン難民命がけの越境

有料会員記事

乗京真知
[PR]

 紛争や迫害などで故郷を追われた人の数が、世界で増え続けている。国連によると、その数は2020年末時点で約8240万人。10年前の約2倍に膨らんだ。地球上に暮らす100人に1人が、住み家を奪われたことになる。

 なかでも「世界最長の難民危機」と呼ばれる問題を抱えているのが、中東のアフガニスタンだ。アフガニスタンを米軍が空爆し、新たな難民流出を招く引き金となった米同時多発テロから、9月11日で20年となるのに合わせ、難民の姿を映したドキュメンタリー映画が公開されると聞き、試写してもらった。

 今回はドキュメンタリー映画の見どころとともに、難民の流出が止まらない事情を、私が現地で出会った若者たちの声を交えながら紹介したい。

 アフガニスタンの難民問題の発端は、1979年までさかのぼる。当時、ソ連軍がアフガニスタンに侵攻し、多くの住民が戦火を逃れて隣国のパキスタンやイランに移った。

 90年代には激しい内戦があり、2000年初頭には大干ばつで食糧難に陥った。01年には米同時多発テロ後の米軍による空爆があったほか、空爆によって政権の座を追われた武装勢力タリバーンの反転攻勢が今も続いている。

 このように40年以上にわたって治安が落ち着かず、人々が住み家を追われてきたことが、難民の帰還を難しくしている要因だ。今では世界に約260万人のアフガニスタン難民がいて、今後も減る見込みは薄い。出身国別に見てみると、アフガニスタン難民は内戦下のシリア(約670万人)や政情不安のベネズエラ(約400万人)に次ぐ規模になっている。

一家4人、3年かけ欧州へ5600キロ

 アフガニスタンで近年目立っているのが、自爆テロや戦闘で勢いづくタリバーンの復権を恐れ、新しい生活の場を求めて国外脱出を図る家族連れや若者たちだ。

 9月11日公開のドキュメンタリー映画「ミッドナイト・トラベラー」(https://unitedpeople.jp/midnight/別ウインドウで開きます)は、そんな家族連れを象徴するような一家の旅を映したものだ。

 映像作家のハッサン・ファジリさんの一家4人が3年かけて、欧州までの5600キロを移動する様子を記録している。命をかけて安住の地を探すアフガニスタンの人たちの苦悩を垣間見ることができる。

 このドキュメンタリーの最大の特徴は、不法な国境越えなど息をのむシーンの数々が、一家のスマートフォン3台によって撮影された点にある。身内だから撮れる家族の本音やむき出しの感情が、作品の記録性を高めている。

 一家が旅を始めたのは、15…

この記事は有料会員記事です。残り2962文字有料会員になると続きをお読みいただけます。