理屈を武装解除せよ はたよしこのボーダレスなアート観

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西田理人
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 障害のある人たちの造形表現に心を奪われ、日本のアール・ブリュットの発掘と紹介に情熱を注いできた絵本作家のはたよしこ(71)。その歩みをたどる企画展が滋賀県内で開かれている。「ボーダレス」という新たな芸術観を通じて、彼女が社会に投げかけたメッセージとは。

企画展「ボーダレスの証明 はたよしこという衝動」は、滋賀県近江八幡市のボーダレス・アートミュージアムNO-MAで8月29日まで。月曜休館。

 重力で垂れる絵の具の線が刻むリズム。紙の上で無限に増殖する三角形の集合体――。近江八幡市のボーダレス・アートミュージアムNO-MA(ノマ)の一角に飾られた数枚の絵に、戦後アメリカで隆盛を極めた抽象絵画を思い浮かべる人もいるだろうか。これらの作品は、兵庫県西宮市の障害福祉施設「すずかけ作業所」で生み出されたものだ。

 はたの活動の原点は、たまたま訪れた展覧会で出会った、特別支援学校の生徒が描いた一枚の絵だった。真っ白な画用紙の隅にびっしりと描かれた小さな点。その無作為な表現にいわく言いがたい衝撃を感じたはたは1991年、同作業所で絵画クラブを始める。当時はあくまで福祉の一環とみられていた障害者の表現活動をアートとして展開し、美術のセオリーを鮮やかに踏み越えるその豊かな創造力を、社会に示そうと考えた。

 95年ごろからは、埋もれた…

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