沖縄の最低賃金に異変 使用者側が発効延期を要求
沖縄県の最低賃金額を議論する沖縄地方最低賃金審議会(島袋秀勝会長)の専門部会で、使用者側が最低賃金の発効日を現行の10月1日以降に延期するよう求めていることが分かった。新型コロナウイルスによる経済回復が見通せない中での賃金アップは事業者への負担が大きいとの理由を挙げている。6日に開く専門部会で協議するが、労働者側は予定通りの改定を求めており、一致に至るかは見通せない。
「聞いたことがない」
関係者によると、使用者側は4日の専門部会で延期を求めたという。厚生労働省は本紙取材に発効日の大幅な変更の事例は「聞いたことがない」としている。
専門部会は、7月21日から協議を開始。中央最低賃金審議会が2021年度の地域別最低賃金の改定の目安を28円としたことを受け、8月2日の第4回会合で労働者側は45円、使用者側は現状維持の0円を提示した。4日の専門部会で労働者側が下方修正し38円を示したところ、使用者側は発効日の延長を求めた。
労働者側は、20年の引き上げ額が、新型コロナの影響で前年比26円低い2円にとどまったことを指摘し、「労働者のために一日も早い改定は譲れない」と賃上げと、予定通りの10月1日の発効を求めている。
審議会は6日に結審する予定だったが、一致が見通せないため予備日の11日にも再度会合を開くことを検討する。
最低賃金は通常、専門部会での全会一致で決定となる。一致しなかった場合、審議会の多数決で決議し、労働局長に答申し、決定する。発効日は全国一律で10月ごろとなっている。
「手続き想定外」
県内の地域別最低賃金を決める専門部会は新型コロナウイルスという特殊事象を背景に、異例の展開となっている。立場の弱い時給労働者を念頭に賃金引き上げを訴える労働者側と、雇用の維持を最優先に現状維持を訴える使用者側間の議論は平行線をたどる。
使用者側は新型コロナの打撃が甚大とし賃上げには否定的だ。ただ、中央審議会が地域の経済情勢などに応じて分類したA-Dの4ランクで、沖縄が入るDランクでも28円の引き上げを決める県も。使用者側関係者は引き上げはやむを得ないとした上で「仮に賃上げするとしても4月までは据え置いてほしい」と訴える。
一方、労働者側は、コロナ禍で事業所は雇用調整助成金など国からの財政支援を受けられるが「時給労働者にはセーフティーネットがない」と指摘。現在、専門部会で示している38円の上げ幅と10月1日の発効は譲れないと強調する。
発効日の変更は可能なのか。厚生労働省は、審議会が決定すれば最低賃金の公示と発効を定めた最低賃金法にのっとり「指定発効」のルール適用で、手続き上は可能との認識を示す。
ただ、同ルールは想定よりも早く賃上げ手続きが完了した場合に、従来の発効日まで引き延ばすための制度。10月以降となれば「想定外の使い方となる」(沖縄労働局)という。
コロナによる県経済への打撃は、最低賃金の審議にも大きく影響している。(沖縄タイムス)
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