沖縄に初の金メダル届けた「剛」と「柔」 喜友名諒が語る形の本質

空手

竹園隆浩
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 東京オリンピック(五輪)は6日、空手男子形で喜友名(きゆな)諒が金メダルを獲得した。沖縄出身者としては、1972年の日本復帰以来、初の五輪金メダリストとなった。

 「自分たちは生まれ育った沖縄で、普段から空手の神髄に接している本物。本物の力を見せる」

 男子形で世界選手権3連覇中の絶対王者、喜友名(きゆな)諒には揺るぎない自信があった。空手発祥の地である故郷の誇りを胸に挑んだ五輪で、その言葉を証明した。

 この日選んだのは、所属する劉衛流の代表的な形だった。予選がオーハンとアーナン、準決勝がアーナンダイ。いずれも中国拳法の原理が顕著な特徴を生かし、連続技が多い流派の奥義ともいえる形だ。

 そして決勝。形名を大声で呼び上げた後の静寂から、演武は始まった。劉衛流のオーハンダイ。前脚から一歩進む間に二つの技を出す「一足二拳」の動き。中国的な指先をまっすぐに伸ばして急所を突く貫手(ぬきて)と呼ばれる技では、親指を締めて残りの4本の指を強く固める。文字通り、指先まで神経が行き届いていた。

 優勝を決めた後、試合場の中央で座礼し、立ち上がって四方にも頭を下げた。感極まり、すぐには言葉が出てこない。「自分一人ではこの舞台に立つことは出来なかった。今は全てに感謝しています」

 鍛え抜かれた肉体を武器に、力強さやスピードには定評があった。さらに、五輪が延期になった1年の間に、沖縄の方言で「ムチミ」と呼ばれる、粘りあるむちのようなしなやかさを手にした。沖縄舞踊なども採り入れてひざの柔らかさに重点を置き、「剛」に「柔」を加えた。

 この日の演武は全て、他には誰ひとり届かなかった28点台だった。劉衛流道統5世である佐久本嗣男・形監督の指導の下、桁違いの強さを見せつけた。

 「形」の本質とは何か。喜友名は「手や足の位置や角度、軌道など全てが先人の知恵。それをしっかり理解して反復練習する」と言う。1972年に本土復帰して以来、沖縄出身者初の五輪金メダリストが、沖縄発祥の競技で誕生した。(竹園隆浩)