「本物」は迷いの先に 胸に刻んだイサム・ノグチの言葉

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山根由起子
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 大理石とブロンズの彫刻を創作し、国内外で活躍する彫刻家の安田侃(かん)さん(76)。まだ芽が出なかった若い頃からずっと支えになったのは、20世紀を代表する彫刻家イサム・ノグチ(1904~88)がふと漏らしたひと言でした。創作活動をともにしたイタリアの工房で目にした巨匠の素顔とは。

 「イサム先生のスケールの大きさを感じます」。東京都美術館(上野)で8月29日まで開催中の展覧会「イサム・ノグチ 発見の道」。安田さんは会場を訪れ、独特の風合いがある石彫など、数々の抽象彫刻を鑑賞した。日本人を父、米国人を母に持つ世界的な彫刻家との思い出が脳裏によみがえった。

 40歳ほど年の離れた2人の抽象彫刻家が交錯したのは北イタリアだった。

 今や国際的に活躍する安田さんだが、若いころは暗中模索していた。70年、25歳の時にイタリア政府の招きで留学。その後も美しい大理石が採掘できる北イタリアで、石職人の工房に住み込み制作をしていた。その工房はノグチも使っていた。

 ある時、ノグチは、未完成のまま積んであった何点かの昔の自作を振り返って言った。「迷いがいっぱい詰まっていていいねぇ」。ふとノグチが漏らした一言が響いた。

 「イサム先生は既に世界的な…

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